1994 Fiscal Year Annual Research Report
土壌の窒素循環における固定態アンモニウムの定量的把握
Project/Area Number |
05660075
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河口 定生 九州大学, 農学部, 助教授 (20091366)
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Keywords | 固定態アンモニウム / 窒素循環 |
Research Abstract |
粘土鉱物を異にする3種の土壌に施用した植物残さより無機化されるNH_4^+の固定と放出等の代謝・循環を明らかにした。まず、既存の固定態NH_4^+、土壌有機態Nや交換性NH_4^+と新しく固定されたNH_4^+を識別するために、水耕栽培により^<15>Nで標識された稲わら(C%=37.00、N%=1.875、^<15>N atom % excess=19.7)を調製した。^<15>N標識稲わらを乾土100g当たり4.00gを添加し、土壌水分の最大容水量の60%である畑条件で30℃、28週間静置培養し、さらに、土壌に風乾処理(室温、4〜5日)あるいは、熱乾処理(80℃、3時間)後に洗浄・培養(30℃、3週間)の操作を6回繰返した。これらの無機化過程中、稲わら由来N(^<15>N)の粘土鉱物の層間への固定速度、その固定されたNH_4^+の放出速度、さらにその後における^<15>Nの代謝循環を検討した。結果:1)静置培養により、無機化した稲わらNの内で固定される割合は、九大付属農場土壌(K:主要な粘土鉱物;メタハロイサイト/副成分;バ-ミキュライト)で1。4%)長野土壌(N:スメクタイト/カオリナイト)で0。5%)都城土壌(M:アロフェン/イモゴライト)で0。1%であり、きわめて小さかった。2)風乾処理によって、稲わらNの固定は無機化過程初期にわずかに増大し、その固定された割合はK:2.6%>N:1.2%>M:1.0%であった。3)風乾処理により脱水強度や無機化促進効果の大きい熱乾処理によって、稲わらNの固定は急激に増大し、その効果は初期に著しく大きく、培養後期まで継続して現われた。その固定割合は、N:8.2%>K:6.8%>M:2.4%であった。4)既存の固定態NH_4^+も含めた全N中、固定された稲わらNの占める割合は、熱乾処理で最も大きく、K:13.2%>N:4.6%>M:3.3%であった。5)無機化過程中、稲わらNの固定は、土壌の既存の固定態NH_4^+含量に直接的には関係なく、土壌の粘土鉱物の種類に影響され、また脱水強度によってNH_4^+の固定される程度は異なることが明らかにされた。 植物に対する下層土からの窒素養分の供給割合を検討するため、土壌断面中の固定態NH_4^+の垂直分布を測定した。その垂直分布パターンは、粘土の含量と種類、塩類濃度、有機物などが影響され、その固定態NH_4^+量よりかなりの割合で下層土の固定態NH_4^+から供給されると推察された、また、土壌中の固定態NH_4^+の動態は、共存するNaとKによっても強く影響された。
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