1994 Fiscal Year Annual Research Report
微生物起源ノイラミニダーゼの作用機構とシアロ糖鎖の酵素合成への応用
Project/Area Number |
05660091
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
井上 國世 京都大学, 農学部, 助教授 (10223249)
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Keywords | ノイラミニダーゼ / シアリダーゼ / シアロ糖鎖 / シアル酸 / ガングリオシド / 酵素合成 |
Research Abstract |
微生物起源のノイラミニダーゼを用いるシアロ糖鎖合成法の確立を究極の目的として、前年度に引き続き、各種ノイラミニダーゼ、とりわけ、クロストリディウムの酸素(C酵素)の性質を検討した。 C酵素の基質コロミン酸に対する親和性はミクロモノスポラの酵素(M酵素)に比べ200倍以上、ストレプトコッカスの酵素(S酵素)に比べ6倍以上も弱い。S酵素では、基質濃度10mg/ml以上で強い基質阻害が認められたが、MおよびC酵素では認められない。C酵素のコロミン酸に対する活性は、エタノール(EtOH)添加により阻害され、40%で完全に消失する。一方、ポリエチレングリコール(PEG)の存在下に活性は上昇し、5-20% PEG ♯600存在下の活性は120%となる。ガングリオシド混合物を基質とするとき、C酵素の活性は、低濃度のEtOH(2-5%)により大きく低下し、10%以下となるが、それ以上の濃度で活性は回復し、20-40%で活性は130%となる。一方、2-20% PEG ♯600存在下に活性は200%に増大する。5% EtOH存在下にPEG ♯600を添加すると、EtOHによる阻害効果は消失することが示された。 ノイラミニダーゼを用いるシアロ糖鎖の合成において、平衡を合成側にシフトさせるために高い基質濃度とアルコール類の添加が有効であると考えられる。本研究で用いた3種の酵素には、基質阻害、アルコールによる失活、PEGによる活性化、基質の構造変化などの要因が重要な役割を果たしていることが示された。ノイラミニダーゼによるシアリル・ラクトースの合成は収率2%で進行する(前年度報告)。本年度の結果から、C酵素を用いてガングリオシドを合成する場合、PEG ♯600(2-20%)の添加が収率増大に有用である可能性が示された。いずれの酵素も極めて不安定であり、安定性の賦与が今後の課題である。
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Research Products
(11 results)
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[Publications] K.Inouye: "Preparation of F(ab')2μ fragments of rat monoclonal antibodies (Immunoglobulins M) and application of the…" Journal of Immunological Methods. 171. 239-244 (1994)
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[Publications] K.Inouye: "Dissociation of dimer of bovine erythrocyte Cu,Zn-superoxide dismutase and the activity of the…" Journal of Biochemistry. 115. 507-515 (1994)
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[Publications] 井上 國世: "好塩性酵素" 生化学. 66. 446-450 (1994)
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[Publications] K.Inouye: "A spectrophotometric study on the interaction of thermolysin with chloride and bromide ions,and…" Journal of Biochemistry. 116. 530-535 (1994)
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[Publications] K.Inouye: "Effects of alcohols on the hydrolysis of colominic acid catalyzed by streptococcus neuraminidase" Journal of Biochemistry. 117. 629-634 (1995)
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[Publications] K.Fujiwara: "New hapten-protein conjugation method using N-(m-aminobenzoyloxy) succinimide as a…" Journal of Immunological Methods. 175. 123-129 (1994)
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[Publications] Y.Iba: "A new system for the expression of recombinant antibody in mammalian cells" Biotechnology Letters. (1995)
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[Publications] 斎藤 明敏: "ラット肝チトクロームP450IA1関与の酵素添加酸素系に対する1,4-ナフトキノン系化合物の効果" 生化学. 66. 1049- (1994)
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[Publications] 大崎 敦士: "ウシ赤血球Cu,Zn-スーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)の単量体への解離" 生化学. 66. 899- (1994)
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[Publications] 井上 國世: "1,2-ナフトキノンによるNADPH酸化反応の速度解析" 生化学. 66. 842- (1994)
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[Publications] K.Inouye: "Animal Cell Technology:Basic and Applied Aspects,VoL.6" Kluwer Academic Publishers,Dordorecht, 631 (1994)