1994 Fiscal Year Annual Research Report
耐塩性酵母における細胞膜ナトリウム輸送因子に関する研究
Project/Area Number |
05660099
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
渡部 保夫 愛媛大学, 農学部, 助手 (00159245)
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Keywords | 耐塩性酵母 / Zygosaccharomyces rouxii / Na^+ / H^+アンチポーター / Na^+-ATPase |
Research Abstract |
現在、耐塩性酵母の耐塩性機構に関する研究はイオン制御の機構に集中している。特に、酵母細胞からNa^+を排出する機構は上記特性の中心命題と考えられる。筆者らは、酵母におけるNa^+排出に関係する因子として、Na^+/H^+アンチポーターとNa^+-ATPaseを想定した。前者に関する研究は主に前年度に実施した。後者に関して、耐塩性酵母Zygosaccharomyces rouxiiからNa^+-ATPase遺伝子(Z-ENA1)のクローニングを行った。Z-ENA1は1094個のアミノ酸をコードしており、出芽酵母のものとほぼ同じ大きさであった。同産物中にATPase機能に関係する5個のペプチドモチーフを完全な形で見い出した。また、食塩ショックに依存して、同遺伝子の発現が誘導されることを確認した。Z-ENA1は出芽酵母のNa^+-ATPase遺伝子(ENA1)と高い相同性を示したが、Z.rouxiiの細胞膜H^+-ATPase遺伝子(Z-PMA1)とは低い相同性しか示さなかった。Z-ENA1とほぼ同じと考えられる遺伝子がさらに最低1個存在することが示された。これらのことは、従来のH^+-ATPase以外にZ.rouxiiの細胞膜にはNa^+-ATPaseが存在することを示唆していた。これらのことからZ.rouxiiの耐塩性機構(Na^+排出機構)にNa^+-ATPaseを介したルートが関与していることを明らかにできたと考えている。なお、Z-ENA1について遺伝子破壊実験は実施できておらず今後の課題であり、また同遺伝子を利用した非耐塩性生物の耐塩性化の試みは重要な課題として残っている。
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