1993 Fiscal Year Annual Research Report
食糧種実シスタチンの分子クローニングとその植物防御物質としての効果の検証
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05660131
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 啓子 東京大学, 農学部, 助手 (10151094)
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Keywords | cystatin / cysteine proteinase / proteinase inhibitor / cloning |
Research Abstract |
本研究は、種実シスタチンの構造とシステインプロテイナーゼ阻害活性の相関を解析するとともに、種実におけるシスタチンの存在理由の1つと予想される殺虫機能(コクゾウムシなどの昆虫による食害を抑止する機能)を検証し、新しい見地からの食糧種実の育種に基礎的に寄与することを目的に実施された。 食糧種実としてはトウモロコシ、コムギ、ダイズを選んだ。これらの植物よりシスタチンのクローニングを行ったところ、コメ種子中より見い出されたオリザシスタチンと相同性の高いものの存在が明らかとなった。種実シスタチンの一次構造および遺伝子構造はいずれも類似しており、シスタチンの活性中心の1つとされているQXVXGの配列を有していた。それぞれの相同性は約60〜70%と高く、また遺伝子構造において動物起源のシスタチンとは大きく異なっていた。このことより植物シスタチンは動物シスタチンとは異なるphytocystatinファミリーを形成しているものと推定された。 これらのクローニングされた遺伝子を大腸菌に導入しシスタチン蛋白質を大量生産し、酵素学的性質を調べたところ、いずれにおいても強いパパイン阻害活性を有していることが判明した。これらの蛋白質が昆虫由来のシステインプロテイナーゼに対して強い阻害活性を示すなら、シスタチン蛋白質の殺虫機能を推定する有力な傍証となりうるであろう。今後これらシスタチン蛋白質と昆虫由来のシステインプロテイナーゼとの阻害活性の検討について実験を行っていきたい。それにより昆虫抑止効果の学術的基礎を提示できるであろう。
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[Publications] M.Abe: "Corn kemel cysteine proteinase inhibitor as a novel cystatin superfamily member of plant origin." Eur.J.Biochem.209. 933-937 (1992)
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[Publications] H.Kondo: "Inhibitory effect of oryzacystatins and a truncation mutant on the replication of poliovirus in infected Vero cells." FEBS Lett.299. 48-50 (1992)
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[Publications] Y.Emori: "Expression of oryzacystatin cDNA using yeast artificial chromosome under ADH promoter in baker's yeast." Biochem.Mol.Biol.Internatl.30. 499-504 (1993)