1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05660154
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 真 東京大学, 農学部, 助手 (10232555)
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Keywords | 保護地域 / 国立公園 / 熱帯諸国 / 住民参加 / 農山村開発 |
Research Abstract |
本研究の結果は以下のようにまとめることができる。 (1)地域開発視点の必要性:熱帯諸国66カ国のデータを利用した多重回帰分析の結果、保護地域の面積を確保するためには、農山村地域の経済水準を向上させることが必要であることが示唆された。 (2)住民参加アプローチ:世界中で試みられてきた地域開発プロジェクトの教訓より、住民参加アプローチが地域開発の成否の鍵を握ることが示されている。 (3)保護地域管理上の諸問題:(1)バッファーゾーンが有効に機能している事例はほとんどない。(2)効果的な保護地域管理のためには保護地域外部の資源管理が有効であるが、対象地の地形・生態・機構条件により、適用可能な技術は限定される。その場合、土着の技術を適用することが考えられるが、実際の活用例は殆ど見られない。(3)観光事業による収益が保護地域の管理に役立てられている事例はごく少ない。ましてや、地域住民に還元されているケースは殆ど無い。(4)保護地域の設定への補償として道路建設を望む人々は多いが、道路建設の後、地域の物価が急騰した事例がみられる。また、道路によって外部からの入植者が増加し、或いは保護地域へのアクセスが良くなったため保護地域が侵犯される事例も見られる。(5)住民参加には5つの局面があるが、これら全ての局面にわたって住民の参加が保証されているケースは少ない。住民参加アプローチが取られている場合でも、結局のところ地域住民は受動的な受益者と位置づけられているにすぎない。 (4)今後の課題:(1)住民参加アプローチの採られている事例のフィールドを主体とした調査の実施。(2)人類学的保護地域、及び飛び地の認められている保護地域管理に関する調査の実施。
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