1995 Fiscal Year Annual Research Report
二員培養下でのナラタケの生物学的種の病原性と接種法の開発
Project/Area Number |
05660157
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
渡辺 直明 東京農工大学, 農学部, 助手 (10143637)
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Keywords | ナラタケ / 水分活性 / 水分特性 / 根状菌糸束 / 二員培養 |
Research Abstract |
ナラタケ病被害林の調査では従来少なかった尾根部での被害発生を中心に調べた。対象ヒノキ林に少なくとも3種以上生物学的Armillaria属菌が生息していることが分かった。7年生被害林分で被害木と良く重なった分布を示したのはA.melleaであったが、別の被害調査地ではこの菌株が存在しないこともあった。国内で未報告のユ-カリ林の被害発生を新たに確認した。 ゴムバンド法による接種後の苗についてP-V曲線法で求めた水分特性値から被害葉は水ポテンシャルの低下が穏やかで萎凋点も高く吸水能の低下が推察された。ヒノキ無菌苗に対するゲル内での二員培養による接種試験では18菌株を用いて枯死した苗はなかった。野外での接種試験で病原性があるとされた菌株も、ゲル内では茎に菌糸が巻いてさえも苗に影響を与えられないことが分かった。本病の感染で重要視される根状菌糸束は尾根発生タイプのA.mellea菌株で-1.5MPaまで発生でき、他の菌株ではcrustoseな菌糸形成のみで、この菌株の戦略的優位性が推察された。過去に根状菌糸束形成は栄養面から研究されていたが、本研究では水分による制御が大きいことが判明した。高い菌糸発光はどの菌株でも-0.8MPa以上の高い水ポテンシャルで観察された。 麦芽エキス培地上での水分要求は菌株間差はあるが-6MPa以下の水ポテンシャルで成長可能な菌株はなかったが、尾根に発生タイプと同等な下限を有する沢発生タイプの株もあった。このことは単純な乾燥ではなく、高濃度溶液のような水分特性値の低い木材の状態に対する適応と考えられ、ここで用いた水分調整培養による実験法の今後の展開が期待できる。また菌株間差異は成長の絶対量よりはコロニー形態形勢で大きいことが判明した。
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[Publications] WATANABE,Naoaki: "Effects of water activity on mycelial growth and luminescence of strains of Armillaria wolloa sensulato" Mycoscience. 37. (1996)
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[Publications] 渡辺直明: "ユ-カリ林のナラタケ病被害" 森林防疫. 45. (1996)
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[Publications] 渡辺直明: "ナラタケ菌糸の形態と成長に与える倍地水ポテンシャルの影響" 日本森林学会106回大会講演要旨集. 106. 81 (1995)