1995 Fiscal Year Annual Research Report
参加・協約にもとづく森林利用の増進に関する実証的研究
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05660163
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
北尾 邦伸 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (50026390)
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Keywords | 市民参加 / 所有と利用の分離 / 地域資源 / グリーンストック / 新入会権 / 都市と農村の交流 / 里山づくり / 環境 |
Research Abstract |
1996年2月に東京で第1回「森林と市民を結ぶ全国の集い」が催され、「市民が支える森林づくり」をテーマにして全国各地から多数の実践者が参集した。本研究を構想した5年前には、このような状況の進展は全く予想できなかったことである。 かくなる広範に展開されてきた新たな「参加・協約にもとづく森林利用」についての実態を把握すべく、かつ、本年は本研究の最終年度であることもあって、各地大学や森林総合研究所、林野庁などに出かけて、広く情報を収集することに努めた。さらに、市民が森つくりに直接参加する事例のなかで、最も楽しく「森に遊ぶ」かたちをつくり得ていると判断した香川県のドングリ銀行について、現地での実態調査を行って現状を分析した。また、「所有」を越えた次元での一つの森林利用形態を、養蜂業者の生業に見いだし、「密源としての森」を島根県六日市町を事例にとって調査した。 市民は広い意味での「環境問題」と係わって登場し、現在、森つくりに「参加」しようとしているのであり、経済システムや森林計画システムはこのことを組み込んで機能することが要求されている。この点が未来社会に向かってのシステムが「健全」か否かの分岐点である。これらのことについて、「環境問題と経済」と題して、学会誌『林業経済研究No.129』(1996)に発表した。 次に、ドングリ銀行などの取り組みを分析し、社会的コンテキストのなかに位置づけるとりまとめを行って、「森林ツーリズム」と題して『森林科学No16』(日本林学会刊、1996)に発表した。 また、これまで私的生活領域で「用の美」にまで高められてきた島根県簸川平野の築地松の今後に注目し、「所有」を越えた「地域資源」としての捉え直しのなかで、保全の取り組みが開始されていることを森林文化論的視覚から調査し、分析した。この作業は、菅原聡編『森林-日本文化としての』(地人書館刊、1996)に所収して発表した。 さらに、本研究の最終年度として、3年間の研究の整序・とりまとめをし、総括を行った。
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[Publications] 北尾 邦伸: "森林ツーリズム" 森林科学. No.16. 2-6 (1996)
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[Publications] 北尾 邦伸: "環境問題と経済" 林業経済研究. No.129(印刷中). (1996)
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[Publications] 北尾 邦伸: "暮らしを守る緑の屏風-出雲の築地松(菅原聰編『森林-日本文化としての』所収)" 地人書館, 303 (1996)