1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05660178
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Research Institution | IWATE UNIVERSITY |
Principal Investigator |
澤辺 攻 岩手大学, 農学部, 教授 (90003780)
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Keywords | 蒸煮処理 / 広葉樹 / 材質熱劣化 / 透気性 / チロース / 木口面吸水量 |
Research Abstract |
針葉樹材について透過性改善効果が認められた蒸煮処理を広葉樹材にも適応し、材質変化と空気透過性の改善効果を検討した。供試樹種は主として道管内にチロースの発達するものを選んだ。得られた結果は以下の通りである 1)蒸煮温度が120℃以上になると主としてヘミセルロースの分解が生じ、材色の暗色化、強度性能の低下および吸湿能の低下を引き起こす。これら現象は蒸煮時間の延長によっても著しくなり、蒸煮材の利用を考慮すると、広葉樹材への適用は蒸煮温度を120℃以下にする必要がある。 2)未蒸煮広葉樹材の透気性は、既に言われているようにチロースの発達度合いに大きく依存し、樹種や辺心材による差異が大きい。蒸煮処理による透気性向上の効果も樹種によって異なり、ブナ、ハリギリでは蒸煮処理によって約2倍程度の増大を示すが、カツラ、クリ、オニグルミではほとんど増加を期待することはできなかった。また、蒸煮後空気加圧処理した場合の透気性は、カツラでは約14倍に、ハリギリでは約5倍に増大するが、ブナでは2倍程度に留まった。以上のように広葉樹材の透気性改善は樹種に大きく依存することが明らかになった。 3)一方、液体流動性に及ぼす蒸煮処理の影響を木口面からの吸水試験で検討した結果、樹種、蒸煮処理条件に関わらずほとんど有意な効果を得ることができなかった。このことを透気性の結果をも考慮して考察すると、蒸煮処理は広葉樹林の透過障壁であるチロースを破壊することができるが、この破壊部分は微小であり、液体流動に関してはバブルによる小孔閉鎖が原因で木口面吸水量の増大には結びつかなかったものと考えられる。
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