1994 Fiscal Year Annual Research Report
スルメイカの再生産機構解明のための実験生物学的研究
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05660195
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
桜井 泰憲 北海道大学, 水産学部, 助手 (30196133)
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Keywords | スルメイカ / 再生産機構 / 飼育実験 / 卵塊 / 人工授精 / 発生適水温 / 釣り鐘型幼生 / 初期餌料 |
Research Abstract |
スルメイカの資源変動機構に大きく関わっている再生産機構の解明を目的として、長期飼育実験手法を用いて、飼育下での成熟・産卵、人工授精および卵発生とふ化幼生の育成実験を実施した。本年度は下記の各研究課題について実験を行い、次のような結果が得られた。 1.卵塊産出時の受精機構および完全な卵塊と崩壊した卵塊での卵発達条件の検討:飼育した雌2尾(外套長27cm)が、水槽内中層に完全な形で存在する卵塊(直径80cmと40cm)2個を産卵した。この卵塊を網籠に収容して中層に懸垂し、ふ化までの卵塊の形状変化が追跡した。各卵塊内の卵数は、大型卵塊が約20万粒、小型卵塊は2万粒であった。卵塊は18℃の水温下で維持した。ふ化は産卵後5-7日目に生じ、その段階で卵塊はばらばらに崩壊した。また、卵塊の内視鏡カメラによる観察から、完全卵塊では卵塊表面の膜を構成する包卵腺由来のゼリー膜が、肉食性動物プランクトン、原生動物やバクテリアの侵入を阻止することが明らかとなった。 卵発生およびふ化幼生の最適生残条件(水温)の検討:計3回の人工授精試験を実施し、胚発生とふ化幼生の生残できる水温範囲の特定のための追試を行った。その結果、卵が正常に発生できる水温範囲は、15-22.5℃の範囲であり、この水温範囲でふ化した幼生は、より低水温ほど長期間生残することが明らかとなった。 ふ化後の幼生の行動特性、初期餌料生物の特定および発育過程の追跡:今年度から、ふ化幼生の初期の餌生物を見つける実験を開始した。餌としては、有機懸濁物、バクテリア、原生動物、および植物プランクトンとワムシを与えた。現在までのところ、初期の餌を特定するまでに至っていないが、かなり微小な原生動物や有機懸濁物プラス海洋バクテリアの可能性が見いだされてきた(次年度の重要研究課題)。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Ikeda,Y.: "Maturational process of the Japanese common squid,Todarodes pacificus in captivity." Recent Advances in Cephalopod Fisheries Biology,ed.by T.Okutani,R.K.O'Dor and T.Kubodera,Publ.by Tokai University Press,Tokyo.181-189 (1993)
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[Publications] Ikeda,Y.: "Ferilization capacity of squid (Todarodes pacificus) spermatozoa collected from various sperm storage sites,with special reference to the role of gelatinous substance from oviducal gland in fertilization and embryonic development." Invertebrate Reproduction and Development. 23. 39-44 (1993)
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[Publications] 桜井泰憲: "スルメイカの生態研究における飼育実験法,イカ類の資源・生態研究にインパクトを与えるであろう最近の技術。" 平成4年度イカ類資源・漁海況検討会議研究報告,平成4年度,. 51-69 (1994)