1993 Fiscal Year Annual Research Report
微小刺激法による魚類遊泳運動の脳内回路および脊髄下降路の解析
Project/Area Number |
05660209
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
植松 一真 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (00116542)
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Keywords | 脳 / 運動誘発領域 / 脊髄下降路 / 微小刺激 / コイ / 魚類 |
Research Abstract |
1.ラット用脳定位固定装置を購入し、口腔から鰓に向けて水が供給されるようにするなど、魚用に改造した。コイの眼上骨、前上眼骨および体側の3ヶ所を左右から押さえることにより魚体を固定した。 2.背部頭蓋骨切除により脳の全域を露出し、自発的運動を抑制するために端脳を切除した。 3.脳の刺激には市販のシャフト径100μm、先端露出長50μmのステンレス電極を用い、脳の表面に設定した500μm間隔のマトリックスにしたがい、深さ10μmおきに刺戟を加えた。刺激電流は100μA、8msec、100Hzの陰性矩形波を用いた。正常な遊泳運動(正常運動)が誘発された点では刺激閾値を求めた。 4.正常運動が誘発された部位は、間脳の外側陥没核・後中心核、中脳被蓋部の内側縦束核・内側縦束・外側縦束・滑車神経核・小脳中脳路・上小脳脚・視蓋延髄路、視蓋部の水平交連、延髄の内側縦束に相当すると思われる。これらの中で最も刺激閾値が低い領域は中脳被蓋部の内側縦束核、内側縦束、上小脳脚であった。 5.刺激閾値が低い部位はより直接的に遊泳運動の解発に関わると考えられる。確かに内側縦束核からは内側縦束を介して脊髄に投射し、上小脳脚は小脳から中脳被蓋部へ投射する系であるので、これらが遊泳運動の解発に関わるとしても不都合はない。 6.一体側方向にのみ尾を振る運動(偏側運動)を誘起する部位が、上記した正常運動を誘起する部位よりさらに多く分布した。電極先端の深さが10μm変わるだけで、偏側運動の方向が逆転するなど、錯綜する神経回路網の複雑さが示唆される結果が得られた。これらの多くは感覚器あるいは感覚中枢から運動系への入力であり、方向転換などの際に反射的に遊泳運動を修飾するものと考えられる。 7.脳内マッピングの方法を確立し、おおよそどこを刺戟するとどのような運動が起こるかが分かった。しかし、それらの部位に相当する脳内構造の解明は、今後の刺戟閾値の詳細な解析と、標識実験の結果にかかる。
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