1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05660225
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮下 和夫 北海道大学, 水産学部, 助手 (10182015)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板橋 豊 北海道大学, 水産学部, 助教授 (60142709)
太田 亨 北海道大学, 水産学部, 教授 (20001612)
|
Keywords | DHA / EPA / 酸化安定性 / 酸化防止 / 乳化 |
Research Abstract |
DHA(ドコサヘキサエン酸;C_<22:6>)やEPA(エイコサペンタエン酸;C_<20:5>)などの高度不飽和酸は、分子中に多数の二重結合を有するため極めて酸化されやすく、これがDHAやEPAを食品・薬品に応用する際の最大の問題点となっている。一方、そうした著しい酸化安定性の低さにもかかわらず、これらの不飽和酸はヒトを始めとして各種生物中に広く分布しており、そうした生物では脂質酸化に対する効果的な防御機構が存在していると思われるが、既知のビタミンEなどの働きだけで、DHAやEPAなどの酸化を完全に抑制することは困難である。そこで本研究では、生体内にはDHAやEPAなどに特異的な未知の酸化防御システムが存在するのではないかと推察し、その解明と高度不飽和脂質の効果的な酸化防止法へのその応用を試みた。 具体的には、DHAやEPAなどが通常生体内で、水を媒体に他の様々な成分と共存していることに着目し、水系での高度不飽和酸の酸化安定性の特徴を検討するところから研究を始めた。その結果まず、代表的な6種不飽和酸の緩衝液中での酸化安定性が、DHA>EPA>アラキドン酸>α-リノレン酸>γ-リノレン酸>リノール酸の順となることを、マスディテクターを検出器に用いたHPLCとGLCによる分析結果より証明した。この順序は空気中にそれら不飽和酸を放置した場合とはまったく異なっており、水系では、不飽和度が高いもの程酸化されにくく、またn-3系の方が、n-6系の不飽和酸より安定なことを始めて明らかとした。また、このような水系での高度不飽和脂質の特徴的な酸化安定性が、各脂質の分子構造に由来することを示し、適当な乳化剤を共存させることにより、空気中では極めて不安定な高度不飽和脂質も、水系では酸化に対して非常に安定となることを明らかにし、高度不飽和脂質に特異的な新しい酸化防止法確立の端緒を開いた。
|
-
[Publications] Kazuo Miyashita: "Oxidative Stability of Polyunsaturated Fatty Acids in an Aqueous Solution" Biosci.Biotech.Biochem.57. 1638-1640 (1993)
-
[Publications] 宮下和夫: "水溶液中でのn-3系及びn-6系高度不飽和脂肪酸の酸化安定性について" 脂質生化学研究. 35. 359-362 (1993)