1994 Fiscal Year Annual Research Report
日本農業の交易条件の変化-1980年代米国、ECとの国際比較分析-
Project/Area Number |
05660241
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長南 史男 北海道大学, 農学部, 助教授 (00113697)
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Keywords | 日本農業 / 交易条件 / 国際比較 / 為替レート / 内外価格差 / 生産構造 / 流通構造 / 規制緩和 |
Research Abstract |
日本農業の交易条件(1980年基準の総合農産物価格指数を総合投入価格指数で除した系列)は1970年代末に悪化したが、1980年代になって持ち直し、微増さえしている。一方、アメリカの交易条件指数は大きな変動があるものの、趨勢低下は明瞭で、日本のそれとはコントラストをなしている。日米比較で明らかなことは、戦前の交易条件の趨勢と同様に「日本農業の特質」が、戦後も維持されていることである。EC諸国を含めて1978年以降の交易条件を比較観察すると、農業の交易条件悪化の度合はかなり異なっていることがわかる。概ね悪化するなかでオランダの交易条件は増加の趨勢にある。これは国際貿易港をもつことによる投入要素価格の有利性が発揮されているからである。 農産物および投入財を国際的な競争財、非競争財に分類して、交易条件への影響を観察した。まず投入財については、日本において本来競争的であるべき工業部門からの投入財の価格が高く、内外価格差は大きい。それは、肥料・農薬などの国内で生産される経常財について顕著であった。為替レートの変動、円高による国内投入財価格低下の効果はきわめて小さく、規制緩和についても1991年に肥料価格安定法が廃止されたが、期待に反して効果はまったく現れていない。農産物産出額の構成をみると大川が「C要素」をもつとしたコメの農産物生産額に占める割合は1955年の53.7%から1994年には25.0%まで低下、米麦では62.1%から26.5%へと低下した。替わって、畜産物の割合が9.8%から27.1%へ増加、野菜も6.1%から24.2%に増加した。すなわち、C要素を減少させ、競争的な部門を増加させたのである。日本農業の交易条件の微増は付加価値の高い部門への転換の成果であり、農家の合理的な対応としての変化と結論できる。
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