1994 Fiscal Year Annual Research Report
イネ科藁稈の消化性に対するアンモニア処理効果の発現機作に関する研究
Project/Area Number |
05660309
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
後藤 正和 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (20144230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江原 宏 三重大学, 生物資源学部, 助手 (10232969)
森田 修 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (90024562)
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Keywords | アンモニア処理 / 細胞壁構造 / 紫外線顕微分光 / X線回析 / セルロース結晶化度 / リグニン |
Research Abstract |
大麦稈の茎部全体に対するX線回折において、2θ=23°付近と16°付近にそれぞれ主要なピークと比較的ブロードなピークが鮮明に観察された。これらのピークはセルロースの結晶性を示すことから、アンモニア処理稈と無処理稈の粉体X線回折を試みたところ、アンモニア処理によるセルロース結晶化度の低下が認められた。この低下の程度は、算出法によって若干異なるものの、通常の処理条件では14-24%であった。これは、先にアンモニア処理稈の細胞組織の電顕観察で認められた「2次壁繊維の配向性に対する機械的損傷」と一致した。これまで、水酸化ナトリウム処理やアンモニア処理によるセルロース結晶性への影響は認められておらず、本研究において初めて、その作用機作として解明された。これは、アンモニアの解離定数が低く拡散能が高いことと密接に関連した現象と推察された。さらに細胞壁の保水性や膨潤性の増大(おそらく、これらへの作用効果はアルカリ加水分解によると推察される)も観察された。 飼料草の消化難易性と密接に関連するリグニンに対するアンモニア処理効果について多く論議されているものの、リグニン構造の複雑性もあってその効果については十分に解明されていない。本研究では、両処理稈から抽出した磨砕リグニンの物理化学的特性ならびに組織細胞壁のVis/UV顕微分光解析を行い、その作用効果は、主として、リグニン末端アルデビド基への求核反応によること、平均分子量、フェノール性水酸基、メトキシル基などの基本骨格への影響はきわめて微小であることを明らかにした。 以上のことから、セルラーゼによる非結晶領域セルロースの易分解性はよく知られているところでもあり、アンモニア処理によるセルロースの非結晶領域の増大や細胞壁の膨潤性の増大とがアンモニア処理による大麦稈の消化性改善と密接に関連していることを明らかにした。
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[Publications] Masakazu Goto: "Ammoniation of barley straw:effect on anatomical and physicochemical characteristics of the cell walls" International Symposium on the Nutrition of Herbivores. in press. (1995)
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[Publications] Masakazu Goto: "Histochemistry and UV-microspectrometry of cell walls of untreated and ammonia-treated barley straw and their degradation by rumen microorganisms" Food Structure. (in press). (1995)