1993 Fiscal Year Annual Research Report
炭酸ガス麻酔と殺豚肉におけるPSE抑制機構に関する研究
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05660312
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
加香 芳孝 鹿児島大学, 農学部, 教授 (90041615)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 孝良 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (70034460)
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Keywords | 炭酸ガス麻酔と殺豚 / 電殺豚 / PSE / アドレナリン / 呼吸性アシドーシス / アデニル酸シクラーゼ / cAMP / 代謝性アシドーシス |
Research Abstract |
炭酸ガス麻酔と殺豚(G豚)と略)の放血血液中のアドレナリン量を電殺豚(E豚と略)のそれと比較すると、麻酔時電気ムチが使用されるため遙かに高いにも拘わらず、PSE発生率が低いという一見矛盾した事実の原因を追求するため、まず筋肉中のアドレナリン量を測定比較したが、やはり血液中同様、G豚の筋肉中のレベルはE豚と比較して高かった。pHの測定結果は、と殺直後〜30分ではG豚筋肉のpHはかなり低くpH6.1〜6.2の程度であるが、以後3時間まではやや上昇(6.7)し、それ以後は経時的に低下した。それに対してE豚では初め高く(pH7.4)、以後は単調に低下した。G豚筋肉のと殺後初期のpHが低い原因は、炭酸ガス吸入による呼吸性アシドーシスによることが推定されるので、筋肉中の炭酸イオン濃度を測定比較したところ、推定通りG豚のと殺直後のレベルは高く(約20倍)以後経時的に低下するのに対して、E豚では低く無変化であることが見出された。このG豚のと殺後初期の低pHは死後の筋肉内グリコーゲノリシスを起動させるアデニル酸シクラーゼ活性を著しく抑制していると推測されるので、次にその酵素反応生成物であり、以後の代謝系酵素活性化のセカンドメッセンジャーでもあるcAMP量を経時的に測定することによってその活性を調べたところ、G豚のcAMPレベルはと殺後初期段階で極めて低く、E豚では対照的に高いこと、さらにグリコゲノリシスの最終産物である乳酸の生成も、これと対応してと殺後初期段階で遅滞していることが見出された。一般にPSE異状肉の発生は、と殺時、豚へのストレス負荷が大きい場合、と殺後初期のと体温が高い間に代謝性アシドーシスが促進されて短時間内に多量の乳酸が生成し、筋肉のpHが急速に酸性極限pH(5.5)またはそれ以下にまで低下するために筋肉蛋白質が変性することが原因であるとされている。これに対してG豚ではと殺後の初期段階のpH変化はむしろ逆で、代謝性アシドーシスの進行が抑制されており、これに依ってPSE発生が抑制されていると結論できる。
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