1994 Fiscal Year Annual Research Report
トランスジェニック動物を高率に作出するための新しい遺伝子導入法の開発
Project/Area Number |
05660323
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東條 英昭 東京大学, 農学部, 助教授 (20041668)
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Keywords | 遺伝子導入 / 制限酵素 / PCR |
Research Abstract |
遺伝子導入技術が家畜に応用され、欧米では既に各種の遺伝子を導入したトランスジェニック家畜が作出されている。家畜へ外来性遺伝子を導入する手段には、遺伝子DNAを直接受精卵の前核に顕微注入する方法が用いられている。しかし、トランスジェニック(Tg)家畜の生産効率が、マウスに比べ著しく低い結果が報告されている。その要因の一つに、注入遺伝子が宿主染色体に挿入された胚とそうでない胚 都の選別ができないことである。更に、DNAの挿入効率そのものが家畜胚では著しく低いことも、Tg家畜作出の大きな障壁になっている。そのため、注入したDNAが高率に宿主DNAに挿入されような新しい遺伝子導入法の開発が必要である。(1)胚を移植する前にTg胚を効率良く選別する手段を開発するために幾つかの方法についてマウス胚を用いて実験を行った。注入した遺伝子DNAの宿主DNA内への挿入率を、着床前胚の段階でPCRにより解析できる方法を確立する目的で、PCR用プライマには、導入遺伝子の3'末端近くの領域とランダムプライマーとを用いて検討した結果、Tg胚を選別する手段として、有効であるものの、精度を高めるには更に検討が必要であることが判明した。一方、プロテアーゼK、DpnI,Bal 31を用いた方法によりTg胚を選別した結果、極めて有効であることが判明したので、今後は、牛胚を用いてその有効性を確認する予定である。(2)受精卵の核内に注入したDNAが宿主DNA挿入される効率を上げる目的で、マウス胚を用い、目的の遺伝子DNAと共に超微量の制限酵素を核内に注入し、宿主DNAの切断と再結合の頻度を高め、外来DNAの宿主DNA内への挿入効率を上げる実験を行った。まず、注入する制限酵素の有効量を知るために、EcoRIを用いて、異なった酵素量を受精卵の前核に注入し、その後の体外培養下での発生能について調べた。無処理卵および緩衝液注入卵では、それぞれ、95.9%および71%の卵が胚盤胞にまで発達した。一方、制限酵素を10IUから10^<-4>IUまでの濃度を8段階に希釈して受精卵の核内に注入したところ、10IUの%から10^<-4>IUの69.8%に至る注入卵がほぼ希釈段階に対応した割合で胚盤胞に発達することが確認された。注入する制限酵素量を10^<-1.5>IUと10IU^<-2>とに限定し、遺伝子DNAと共に注入する実験を行い、遺伝子DNAの挿入効率を検討し、現在その結果を分析中である。(3)形質転換牛作出の基礎研究としてウシ屠体卵巣卵子を用いた、体外成熟、体外受精及び体外発育には、体外受精に用いる凍結精液作製時の希釈液の種類ならびに種雄牛が大きく影響することが判明した。DNA顕微注入法による遺伝子導入に際し、胚の移植前にトランスジェニック(Tg)胚を効率良く選別する方法の開発を試みたその結果、DNA注入後、体外培養した胚を、プロテアーゼK,DpnI,Bal 31などの酵素を処理する方法が有効であることが判明した。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] H.Tojo,S.Tanaka,S.Matsuzawa,et al: "Production and characterization of transgenic mice expressing a hGH fusion gene driven by the promoter.." Journal Reproduction and Development. 39. 145-155 (1993)
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[Publications] K.Katsube,H.Tojo,Y.Sakaguchi,et al: "Human fetal-adult globin gene switching in transgenic mice;persistent expression of the Gr-globin gene...." Biochem.Biophysi.Res.Commun.194. 146-152 (1993)
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[Publications] H.Nagazawa,M.Hasegawa,K.Yamamoto et al: "Normal and neoplastic growth of mammary glands and circulating levels of prolactin and growth hormone.." Zoological science. 10. 967-970 (1993)
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[Publications] S.Tanaka,H.Tojo,C.Tachi: "Possible involvement of amiloride-sensitive Na+/H+exchanger and/or Na+ transpoter systems in hatching.." Journal Reproduction and Development. 39. 97-107 (1993)
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[Publications] A.Ikeda,S.Matsuyama,M.Nishihara,H.Tojo: "Changes in endogenous growth hormone secretion and onset of puberty in transgenic rats expressing human.." Endocrine Journal. 41. 525-529 (1994)
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[Publications] S.Tanaka,K.Kasai,H.Tojo,T.Sawasaki,: "Melanocytes fail to survive in hair bulbs of the Shiba goat(Capra hircus)with the dominant black-eyed.." Pigment Cell Research. 7. 152-257 (1994)
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[Publications] 家畜繁殖学会編: "新繁殖学辞典" 文永堂出版,東京, 609 (1993)
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[Publications] 大沢利昭・小山次郎他編: "免疫学辞典" 東京化学同人, 616 (1993)