1994 Fiscal Year Annual Research Report
木質系バイオマス資源の有効利用に関する基礎的研究-遺伝子工学的手法を用いるリグニン分解酵素の大量生産-
Project/Area Number |
05660379
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
麻田 恭彦 香川大学, 農学部, 助教授 (70151032)
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Keywords | リグニン / 担子菌 / Pleurotus ostreatus / マンガン / ペルオキシダーゼ / 木質系バイオマス資源 |
Research Abstract |
本年度では、担子菌Pleurotus ostreatus(ヒラタケ)が生産するリグニン分解酵素であるマンガン依存性ペルオキシダーゼ(MnP)の遺伝子およびcDNAの構造解析、並びにMnPcDNAの異種宿主における発現について検討した。 まず、本酵素遺伝子およびcDNAをクローニングし、それらの全塩基配列を決定した。解析の結果、本遺伝子はメチオニンで始まる29アミノ酸残基から成るシグナルペプチドとアラニンで始まる332アミノ酸残基から成る成熟MnPをコードしていることが明らかとなった。この結果は、本酵素が菌体外酵素であることと一致した。また、本遺伝子には、15個のイントロンが存在したが、このイントロンの多さは本遺伝子の特徴を示すものであると考えられる。イントロンはすべてそれらのスプライシング部位において、GT-AGの一般則に従っていることが判明した。本遺伝子の5'-非コード領域には、真核生物の遺伝子に特徴的なTATAボックスおよびCAATボックスと推測される配列が各々2箇所存在することが明らかとなった。また、3'-非コード領域には、ポリAシグナルと推測される領域が存在した。本酵素遺伝子およびcDNAの塩基配列の結果から推測された本酵素のアミノ酸配列の解析から、本酵素にはペルオキシダーゼに特徴的な活性部位の存在が認められることや、N-グリコシレーションサイトが一箇所存在することなどが判明した。次いで、MnPcDNAを発現ベクターに挿入して得られた組換えベクターを、Saccharomyces cerevisiaeあるいはAspergillus oryzaeに導入したが、活性のあるMnPを生産する形質転換体は得られなかった。しかし、A.oryzaeにおいては、染色体に挿入されたMnPcDNA(サザンブロット解析により確認)がベクター由来のプロモーターの支配下で転写され、MnPmRNAが生産されていることがノーザンブロット解析から判明した。これらの結果から、A.oryzaeにおいてMnPcDNAの転写は起こるがその後の翻訳過程、あるいはタンパク質プロセシングの過程に問題があるために、活性のあるMnPが生産されなかったことが予想された。
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