1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05670029
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Research Institution | Tokyo Medical College |
Principal Investigator |
白間 一彦 東京医科大学, 医学部, 助教授 (00074659)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加納 和孝 東京大学, 医学部, 助手 (70111507)
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Keywords | ハーダー腺 / ハーダー腺由来細胞成長因子 / 角膜 / 網膜 / 損傷 / 治癒 |
Research Abstract |
ハーダー腺は瞬膜をもつ多くの陸上動物に存在する複合管状胞状腺であるが,この腺の働きについては十分には明らかにされていなかった。最近,報告者等はこの腺の中に細胞成長因子が存在することを発見し,その構造も決定した。平成5-6年度の本助成により,培養角膜細胞(上皮細胞および実質細胞)や神経細胞の成長が本子によって促されることを見出した。その刺激効果は他の成長因子(線維芽細胞成長因子=FG,血小板由来成長因子=PDGF等)によって,更に増進された。また,線維芽細胞成長因子のような成長因子の細胞表面受容体に結合して成長因子の活性を抑制するシュラミンを投与すると,線維芽細胞成長因子の角膜細胞に対する効果は完全に抑制されるものの,Harder腺由来細胞成長因子や血小板由来成長因子の作用は50%程度軽減されるのみであった。したがって,細胞増殖のためのシグナルの経路は成長因子によって異なり,角膜細胞は線維芽細胞成長因子とは異なるHarder腺由来成長因子の受容体をもつことが考えられた。さらに,Harder腺由来細胞成長因子は網膜の色素上皮細胞と神経細胞の増殖を促すが,ヒト胎児神経細胞に対する程の効果はみられなかった。しかし両単離細胞の混在培養では,本因子投与によって細胞極性がみられ,色素上皮細胞上に神経細胞が移動した。この結果は本因子が網膜の再構成に関与することを示唆する。 本助成の目的を遂行する程度で,Harder腺自体の微細構造における基礎的研究が必要不可欠であり,哺乳類と鳥類について比較解剖学的に検討した。鳥類では腺の中に多量の形質細胞を有し,局所免疫器官としての機能をもつことが示唆され,哺乳類では細胞成長因子を含有し,角膜の損傷・治癒に関与することが考えられた。この結果は,目の保護の機構が種によって異なり,鳥類では免疫学的に哺乳類では化学的物質によっていることを示すものであった。また,鳥類のHarder腺の微細構造を詳細に検討する過程で,下記のことを発見した。すなわち形質細胞が基底膜を貫通し,膜上皮細胞間に侵入すること,神経終末が形質細胞と密接することである。これらの知見は鳥類のHarder膜が免疫系一神経系の研究に有用であり,この点を更に追求する必要があると思われる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Shirama K.et al.: "Review:The avian Harderian gland-Morphology and Immunology-" Microscopy Research and Technique. 29(in press). (1994)
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[Publications] Shirama K.et al.: "Histological and ultrastructural studies on the Harderian gland of Japanese quail" Acta Anatomica. 153(in press). (1995)
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[Publications] Shirama K.et al.: "Ultrastructural study on the Harderian gland of the rabbit(Oryctolagus cuniculus)" 280(in press). 1995.