1993 Fiscal Year Annual Research Report
含水試料の走査電顕観察のための試料作製法の開発と応用
Project/Area Number |
05670033
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
田中 敬一 聖隷クリストファー看護大学, 看護学部, 教授 (00031948)
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Keywords | 走査電顕 / 低真空 / 反射電子 / 含水試料 / シグナル増強法 / 白金ブルー |
Research Abstract |
含水試料を走査電子顕微鏡で観察するためには鏡体内での水分の蒸発を抑えねばならない。そのためには試料室の真空度を低くする必要があり、その目的で造られたのが低真空試料室を具えた走査電子顕微鏡である。しかし一方において、真空度を悪くすればするほど電子線は散乱されるため、試料の像を得るための十分なシグナルが得がたくなる。したがって、どの程度まで下げることが出来るか、また、その時の観察条件をどのように設定するげきかということが大きな問題になってくる。 本年度の研究においては、まず、上記のごとく、撮影条件の検索を行った。その条件は試料の種類によって大きく異なるが、バナナの表皮細胞、セイタカアワダチソウの葉のような植物組織の場合においては、反射電子モード、0.6Torrの真空度で、ほとんど生と同じ状態が撮影出来ることを明らかにした。しかし、この条件は動物組織にもそのまま応用出来るものではない。たとえば、胎盤を観察すると、0.6Torrでは急速に水分が失われ、微細構造は全く変化してしまう。したがって、さらに低い真空度での観察が望まれるのであるが、2.0Torr.以下に下げると像が認め難くなってしまう。そこでこのような低真空でも、なおかつ十分なシグナルを得ることの出来る方法の開発を試みた。 従来、シグナルの増強には、金属被着法が用いられたが、この方法は濡れた試料には応用出来ない。そのため、新しく、白金ブルーによる染色法を考案した。白金ブルーは、他の白金化合物のように結晶しないので、大変好都合である。この方法により、4.0Torrの真空度でも十分なシグナルを得ることが出来、本法が今後、含水試料のSEM観察に大変役たつであろうことを確認した。
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[Publications] Tanaka,K.&Inagaki,K.: "Enchancement of the BSE signal from hydrous SEM samples by use of a platinum blue." J.Electr.Microsc.42. 255 (1993)
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[Publications] 田中 敬一: "走査電子顕微鏡の世界12,含水試料の観察" 病態生理. 12. 969-971 (1993)