1994 Fiscal Year Annual Research Report
含水試料の走査電顕観察のための試料作製法の開発と応用
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05670033
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
田中 敬一 聖隷クリストファー看護大学, 看護学部, 教授 (00031948)
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Keywords | 走査電顕 / 低真空 / 含水試料 / 冷却ステージ / ジメチルスルフォキシド |
Research Abstract |
本年度は冷却ステージ使用による含水試料の観察法について検討した。この方法は、水の蒸気圧が温度によって大きく変わることから、試料を冷却することにより試料室の真空圧を水分の飽和蒸気圧に近ずけ、試料の乾燥を防ごうと試みる方法である。すなわち、水分の蒸気圧は0℃の時は610Paであるが、-10℃では260Paである。610Paでは一般に像を得るに十分なシグナルを得ることが難しいが、260Paであれば可能である。幸い、最近、ベルチエ素子を用いた簡単な冷却ステージが開発された。この装置は液体窒素が不要であるし、0℃あたりでの温度の調節が容易に出来る利点がある。そこで、今回の研究では専ら、この装置を用いて検索を行った。その結果、バナナ表皮細胞のような植物細胞では、-10℃まで冷却することにより、従来の10倍以上の時間、無収縮で観察することに成功した。一方、動物組織細胞の場合は含水量が多いため、-10℃まで冷却すると、内部に生じる氷晶により構造が破壊されてしまう。そこで、本研究では、氷晶防止効果のあるジメチルスルフォキシド(DMSO)にあらかじめ試料を浸漬して、氷晶障害を避ける方法を新しく開発し、これにより十分な像を得ることに成功した。この方法はまだ開発されたばかりであり、倍率的には満足のいくものではないが、今後、さらに改良することにより、臨床医学など、色々な方面で利用される可能性があるものと思っている。
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[Publications] Tanaka,K.Kuboki,K.&Endo,K.: "Application of a new coolig stage to SEM observation of hydrous biological samples." J.Electron Microsc.43. 240 (1994)