1994 Fiscal Year Annual Research Report
アカントアメーバの病原性と宿主の防御免疫反応に関する研究
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05670226
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Research Institution | Nagoya city University |
Principal Investigator |
太田 伸生 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (10143611)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 誠 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (90137117)
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Keywords | アカントアメーバ / T細胞クローン / Acanthamoeba polyphage / Acanthamoeba castellanii / T細胞エピトープ |
Research Abstract |
初年度にアカントアメーバに特異的なヒトのT細胞クローン(CD4^+8)を樹立したので、それを用いてアメーバのT細胞エピトープの種間差、個体差、或いはその病原性に応じた抗原変異解析への応用の可能性を検討した。髄膜炎患者より分離されたAcanthamoeba polyphage(Ap)と角膜炎病巣より分離されたA.castellanii(Ac)をPYG培地で培養し、Acについては微小操作法を用いてクローン化をおこなった。アメーバの性状については、増殖の温度感受性と病原性の有無によって評価した。病原性は各アメーバ栄養体2×10^4のBALB/cマウスの経鼻接種をおこなった後のマウスの生死によって判定した。以上によって性状評価を行った各アメーバのbulkまたはクローン集団よりPBS可溶性粗抗原を抽出して、ヒトT細胞クローンに刺激抗原として添加し、その反応性を比較検討した。13株のヒトT細胞クローンの反応性を指標として、AcとApの種間の或いは同種内のT細胞認識エピトープの変異を調べたところ、Acにのみ反応するクローン、AcとApすべてに反応するクローン、及びAcの一部にのみ反応するクローンの3種類の反応パターンが存在した。このことから、アカントアメーバのヒトCD4^+T細胞認識エピトープには種間で共通、種特異的、及び同じ種内でも個体特異的、の少なくとも3種類が存在することがわかった。このようなアカントアメーバの種内での抗原変異がアメーバの病原性の多様性とどのような関係にあるのか、という点については、樹立したアメーバのクローン毎には明白な病原性の差異が認められなかったことから(10〜30%死亡)、現時点ではT細胞認識エピトープの特異性とアメーバの病原性との相関は見いだせていない。今後はアメーバの病原性のマーカーになりうる抗原決定基を明かにして、それに対する宿主のT細胞反応の解析を通じて、アカントアメーバ症の発症機序を解明することが重要であると思われる。
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[Publications] Yoko Tanaka: "Acanthamoeba-specific human T-cell clones isolated from healthy individuals." Parasitology Research. 80. 549-553 (1994)
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[Publications] Akira Ishii: "Parasite infection and cancer:with special emphasis of Schistosoma japonicum infections(Trematoda)." Mutation Research. 305. 273-281 (1994)
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[Publications] 太田伸生: "今日の神経疾患治療指針" 亀山正邦,高倉公朋編、医学書院, 3 (1994)