1993 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルス潜伏感染細胞内におけるウイルスゲノムの動向に関する研究
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05670283
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
田中 利典 自治医科大学, 医学部, 講師 (30146154)
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Keywords | インフルエンザウイルス / MDBK細胞 / NS遺伝子(ゲノム) / 潜伏感染 / competivePCR法 |
Research Abstract |
本年度の研究実施目的は、インフルエンザウイルスが潜伏感染していると考えらえるMDBK細胞のvariant(MDBK-R)細胞内のウイルスに特異的なゲノムを正確に定量し、ウイルスゲノムが細胞の継代(分裂)に伴って増殖していることを明らかにすることである。そこで各継代ごとに50cm^2dishに作成した単層細胞より総RNAを抽出し、この中に含まれるウイルスの特定ゲノムを我々が開発したcompetive PCR法の応用法を用いて定量した。すなわち、【.encircled1.】プラズミドに組み込まれたインフルエンザウイルスNS遺伝子の311番目のTをCに変換し、制限酵素(XhoI)で切断される部位を導入した。【.encircled2.】プラズイドから転写されたvRNAをcompetitorRNAとし、既知量のcompetitorRNAを核酸抽出時にdishに投与して抽出やその後の操作における特定ゲノムの回収率を補正した。【.encircled3.】dishから調整されたcompetitorRNAを含む総RNAを逆転写し、合成されたcDNAを^<32>Pラベルしたプライマーを用いてPCRを行った。【.encircled4.】増幅されたDNAをXhoIで処理してアガロースの電気泳動にかけると、細胞に含まれていたウイルスのNSゲノム由来のPCR産物と既知量のcompetitorRNAに由来するPCR産物を区別することができた。【.encircled5.】アガロースから切り出した画面分の放射能比から両者の量比を求め、細胞内のNS遺伝子量を算出した。 competitorとして用いたRNAはウイルスRNAと1つのヌクレオチドしか違っていない相同のRNA(NS遺伝子)と考えられることから、この方法を用いることにより細胞内のRNA(NSゲノム)を正確に定量することができたものと考えられる。この方法により、以下のことが明らかになった。【.encircled1.】8代継続代したMDBK-R細胞内には平均0.6コピーのNS遺伝子が存在しており、18代継代したMDBK-R細胞内には平均0.1コピーのNS遺伝子が存在している。【.encircled2.】ウイルスの総RNA量は細胞の継代にともなって徐々に減少しているが、10代後の継代細胞では1種の細胞がおよそ10^6個に分裂していると考えられることから、この継代細胞(MDCK-R)ではウイルスゲノムが増殖しながら持続していることが示唆される。
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