1993 Fiscal Year Annual Research Report
高年妊娠における染色体異常の高頻度発生要因の再検討
Project/Area Number |
05670317
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
遠藤 晃 山形大学, 医学部, 教授 (30018684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重茂 克彦 山形大学, 医学部, 助手 (60224309)
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Keywords | 母年齢 / 遅延受精 / 染色体異常 / 発育遅延 / マウス |
Research Abstract |
ヒトでは、高年齢の母親から産まれた児には染色体異常の頻度が高い。過去の動物モデル(マウス)を用いて行った実験では、加齢に伴う染色体異常の出現頻度はヒトで予想されたほど急増する様子はみられていない。今回は、この問題を新たな仮説のもとで分析することにした。すなわち、ヒトの場合は、卵の加齢(年単位)に遅延受精(時間の単位)が加味された状態が一般であり、この両者が染色体異常誘発に相乗的に働いているのではないかと考えた。そこで、若年、及び老齢マウスを各々、排卵予定時間から遅らせて受精させ、胎児に出現する染色体異常の頻度を調べた。 その結果、若年群では、母獣あたりの着床数、生存胎児数は、正常受精群と遅延受精群との間で差は認められなかった。しかしながら、老年群では、遅延受精群の生存胎児数は、減少する様子が認められた。また、体節数を形成していないpre-somite段階の胎児の頻度は、母獣の年齢に伴い増加していた。これらのことは、母獣の年齢の増加が、胎児の発育を抑制することを示唆している。また、染色体異常の頻度については、若年群では、正常受精群と遅延受精群との間でその出現頻度に違いは認められなかった。しかし、老年群では、正常受精群に比べて遅延受精群の染色体異常の頻度が増加する様子が認められた。このことは、母獣年齢の増加に遅延受精が加味されると染色体異常の頻度が増加することを示している。このように母年齢に遅延受精が加味されて出現する染色体異常は、第二減数分裂以降の染色体不分離に起因するものと考えられる。最近、ダウン症児において、第一減数分裂染色体不分離によるものよりも第二減数分裂染色体不分離によるもののほうが、母年齢が高いという報告がなされた。今回の結果は、このことを実験的に支持しうるものと考えることができる。
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