1994 Fiscal Year Annual Research Report
生態系元素間バランスの変化が及ぼす生体影響に関する研究
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05670364
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
関 幸雄 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (00093427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 久吉 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (60168945)
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Keywords | 元素間バランス / カドミウム / セレン / 慢性生体影響 / 生態系 / 酸性雨 |
Research Abstract |
平成5年度ではマウスにカドミウム(Cd)を含む飲水投与モデルによる実験を実施し、セレン(Se)摂取量の違い、特にSe欠乏によって、1)Cdの臓器蓄積が高まること、2)解毒関連の酵素活性が上昇すること、また、3)必須元素(Zn、Cu,Fe)の変動が認められること等の知見を得た。 平成6年度では、平成5年度の知見を基に更に詳細な知見を得るため、ラットを用いて実験を実施した。すなわち、異なるSe餌(欠乏、正常、添加)を与え、一方ではCdを経口投与用カニューレで定量投与し、Cdの生体影響に及ぼすSe摂取量の違いによる影響を尿、血液、臓器組織中の臨床生化学検査を行い検討した。 平成6年度の研究成果は以下のとおりである。 1)血液、肝臓、腎臓中のSe濃度はSe欠乏餌群で有意に低下した。 2)Se添加餌群の血中CdとSeの濃度はSe正常餌群や欠乏群に比して高値を示した。 3)肝機能障害(血中GOT,GPT活性の上昇)が認められないにも拘わらず、全実験群で肝臓よりも腎臓中に多のCdが蓄積した。また、心臓中へのCd蓄積はSe欠乏により上昇した。 4)解毒関連酵素GSTの活性はSe欠乏群で活性の上昇が認められた。 5)腎臓機能異常を反映する尿中酵素排泄の増加が、Se欠乏餌群で著明であった。 6)Se欠乏餌群の腎臓中のCd化学形態を調べたところ、Cdの解毒に関連する金属結合蛋白質メタロチオネイン(MT)に結合されないVdに割合が多かった。 7)血漿中銅濃度およびゼルロプラスミン活性の低下はSe添加により軽減された。 以上の結果から、Se欠乏下におけるCd摂取はCのd心臓蓄積を高めること。また、腎臓中の活性型Cd(非MT結合Cd)の存在割合を高め、腎臓機能異常の発現を助長する可能性のあることが考えられた。一方、Seの添加では血中でのCD-Se複合物質の形成によりCdの生体影響が軽減される傾向にあることが考えられた。Cdの低濃度暴露と循環器疾患との関連性が指摘されているが、疫学研究においてもCdのみならずSeの摂取状況も含め検討する必要性を示唆する研究成果を得た。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Ohta,H(3名): "Effects of dietary selemium(Se)on chronic cadmium(Cd)tonicity in mice and rats." The Toxicology. 14(1). 233 (1994)
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[Publications] 太田久吉(3名): "カドミウム長期経口投与ラットの肝腎機能変化に及ぼすセレンの修飾作用" 日本衛生学雑誌. 49(1). 117 (1994)
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[Publications] Ohta,H(3名): "Recent Advances in Researches on the combind Effects of Enveronmental Factors." Ed.by M.Kasuya, 625 (1995)