1994 Fiscal Year Annual Research Report
成人スチル病の高フェリチン血症に関する研究:産生機序および病態への関与
Project/Area Number |
05670436
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health (UOEH) |
Principal Investigator |
大田 俊行 産業医科大学, 医学部, 助教授 (10140930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江藤 澄哉 産業医科大学, 医学部, 教授 (90010347)
田中 良哉 産業医科大学, 医学部, 助手 (30248562)
白川 文彦 産業医科大学, 医学部, 講師 (10158967)
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Keywords | フェリチン / 成人スチル病 / Con-A / 鉄 / IL-6 / IFN-γ |
Research Abstract |
昨年度の研究を踏まえ、本年度は以下の知見を得た。 1)成人スチル病ではその活動期にみられる著増血清フェリチン(1,000ng/ml以上)の85-95%がCon-Aとは結合しないフェリチン(Con-A非結合フェリチン)であり、50-90%がCon-A結合フェリチンである健常人の血清フェリチンとは異なっていた。しかもこのCon-A非結合フェリチンの比率は、治療により血清フェリチンが正常となっても変化しなかった。このように成人スチル病では非活動期においてもフェリチンのCon-A結合性において健常人とは異なっており、今後何故Con-A非結合フェリチンが生成され・血中へ出現するのか(粗面小胞体での糖鎖の合成異常?)さらに研究が必要である。2)近年種々の培養細胞を用いた研究によって種々のサイトカンが細胞内フェリチンの合成を増加させることが明らかになってきた。昨年度,患者血清IL-1β,TNF-α,IL-8が活動期は非活動期に比して有意に高値(p<0.01)であることを報告したが、今年度はIL-6、IFN-γをELISAにて測定したIL-6は活動期の血清において有意に高値であった(p<0.01)。一方、IFN-γは活動期、非活動期とも血清中に検出されたが両者間で有意差を認めなかった。3)血清フェリチン分子中の鉄含有率(鉄濃度/フェリチン濃度)は成人スチル病患者では2.6-6.3%であり健常人血清フェリチンの鉄含有率との間に有意差を認めなかった。さらに、活動期の鉄含有率が非活動期に比して低下する事もなかった。最近入手した重症肝不全患者の血清フェリチン(23,000ng/ml)の鉄含有率は10%、精製ヒト脾フェリチンの鉄含有率は平均24.4%であった。 以上成人スチル病の活動期は種々の高サイトカン血症がみられ、これらによって高フェリチン血症が惹起される可能性がある。一方、フェリチン分子中の鉄が病態に関与する可能性については、血清フェリチンの鉄含有率があまりにも低く、血清フェリチンが直接関与する可能性は低いと思われる。しかし組織(網内系?)の鉄含有率の高いフェリチンが炎症のため細胞内から逸脱するとき鉄が放出されるため低くなる可能性は否定できない(その時、ヒドロキシラジカルの産生がおこりさらに強い組織障害を惹起する)。
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