1994 Fiscal Year Annual Research Report
肝発癌監視・抑制のレチノイドによる制御とその遺伝子機構に関する研究
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05670463
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
森脇 久隆 岐阜大学, 医学部, 助教授 (50174470)
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Keywords | 肺癌 / 発癌抑制 / レチノイド / アルブミン / α-フェト蛋白 / 遺伝子発現 / 分化誘導 / アポトーシス |
Research Abstract |
レチノイドは抗発癌プロモーターとして作用するが、その制御メカニズムとしては特に分化誘導とアポトーシス惹起とが重視されている。本研究では肝細胞癌をモデルとして、特に前者の作用の遺伝子レベルでのメカニズムに焦点を合わせて研究を進めている。これまでに、ヒト肺癌由来の細胞株であるHuH7とPLC/PRF/5の両者において、合成レチノイド(E5166)が癌胎児性蛋白であるαフェト蛋白のmRNA発現を抑制し、逆に成熟した肝細胞の機能の最も重要な指標であるアルブミンのmRNA発現を促進すること、すなわち肝癌細胞株において生化学的なレベルでの分化誘導を惹起することを確認した。一方、天然レチノイドである全トランス・レチノイン酸にはこのような作用がないことも見出した。すなわちこの事実は、同じレチノイドに属する化合物であっても、例えばアルブミンの遺伝子発現に及ぼす作用が全く異なる場合があることを示しており(Molecular Carcinogenesis,1994,10:151-158)、有効な化合物を選択する上で極めて重要である。また、このような選択を行う上でも、その制御メカニズムを解明することは不可欠の作業である。アルブミンの遺伝子発現は、hepatocyte nuclear factor-1(HNF-1)の直接の支配下にあるが、HNF-1に対しては少なくとも2つの制御がかかっている。1つは促進的に働くHNF-4からのものであり、もう1つはこのHNF-4→HNF-1の経路にpremissiveな効果を与えるAP-3の系である。それぞれの経路のさらに上流では、レチノイドの核レセプターであるRXRαとRARβが制御することが示唆されている。この点に関して本年度は新たにE5166がRXRαを、全トランス・レチノイン酸がRARβを受容体として前述のような異なった作用を発揮することを証明した。さらに同様の作用を有する次世代レチノイドの開発も進めている。
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[Publications] Yamada Y: "Positive and negative regulations of albumin gene expression by retinoids in human hepatoma cell lines." Mol Carcinogenesis. 10. 151-158 (1994)
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[Publications] Yamada Y: "Human papilloma virus type 16-positive esophageal papilloma at an endoscopic injection sclerotherapy site." Gastroenterology. 108. 550-553 (1995)
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[Publications] Nakamura N: "Induction of apoptosis by acyclic retinoid in human hepatomaderived cell line,HuH-7." Biochem Biophys Res Comm. 207. 382-388 (1995)