1993 Fiscal Year Annual Research Report
胃粘膜細胞における細胞骨格を介した酸化ストレス応答の分子機構
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05670481
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
六反 一仁 徳島大学, 医学部, 助教授 (10230898)
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Keywords | 培養胃粘膜細胞 / グルタチオン / S-thiolation / アクチン / 酸化ストレス |
Research Abstract |
本研究は、細胞骨格を介した酸化ストレス応答の分子機構の解明を目指したものである。本年度は、培養胃粘膜細胞を用いて、酸化ストレス応答として認められる蛋白質修飾(S-thiolation)を明らかにした。なかでも、著明な修飾を認めたアクチンのS-thiolationについて、その生理的意義について報告した。昨年度は、核内蛋白質のS-thiolationについても検討した。その結果、diamide添加により細胞質のアクチン以上に、核内のアクチンに強いS-thiolationが生じることを明らかにした。アクチンは、ストレス蛋白質と結合し、ある細胞においては熱ショックストレスを負荷すると、核内にアクチンロッドが形成されることが知られている。アクチンのS-thiolationは、ストレスシグナルを核内に伝達する機構の一つと考えられる。核内のS-thiolationを解析すると、細胞質蛋白質とは異なったいくつかの核内蛋白質にS-thiolationを認めた。現在注目されている酸化還元レドックスによる転写調節の分子機構として、核内蛋白質(転写因子)のS-thiolation/dethiolationによる調節機構の存在が強く示唆された。本年度の研究の中で、この点を明らかにするため、NF-kBの転写調節に焦点を絞り、S-thiolationによるc-fosの転写の活性化について検討する上で、非常に重要な所見が得られた。 一方、S-thiolationを起こしたアクチンはDNaselとの結合能を失い、その結果DNaselの活性化を引き起こす事をin vitroの系で明らかにする事が出来た。実際に、培養胃粘膜細胞に酸化ストレスを負荷すると、DNaselの活性化が生じる事も確認できた。このアクチンのS-thiolationによるDNaselの活性化については、同じ酸化ストレスにおいて、核内のアクチンに強いS-thiolationが生じる事を確認し、核内DNAのfragmentationを生じる機構を明らかにする重要な所見を得た。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] K.Rokutan,R.B.Johnston,Jr.& K.Kawai: "Oxidative stress induces S-thiolation of specific proteins in cultured gastric mucosal cells." Am.J.Physiol.266 (in press). (1994)
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[Publications] Y-C.Chai,S.S.Ashraf,K.Rokutan et al.: "S-thiolation of individual human neutrophil proteins including actin by stimulation of the respiratory burst." Arch.Biochem.Biophys.(in press). (1994)
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[Publications] K.Rokutan,A.Sakai,F.Teramoto et al.: "Epidermal growth factor-induced mitogen signals in cultured intestinal epithelial cells." J.Gastroenterology. 29 (in press). (1994)
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[Publications] 川井啓市 六反一仁: "胃腺細胞の分化・増殖とその制御-局所環境との関連で" 消化性潰瘍. 12. 47-59 (1993)
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[Publications] 六反一仁 荻原正示他: "細胞レベルからみた消化管粘膜の防御機構" Cytoprotection & Cytobiology. 11. 9-16
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[Publications] 六反一仁(分担): "21世紀を目指し羽ばたく消化器病学" 日本医学館, 515
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[Publications] 六反一仁(分担): "胃-形態とその機能" 医学書院 印刷中,