1993 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクター・ピロリの胃に対する病原性-感染日本猿を用いた長期経過の観察-
Project/Area Number |
05670487
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Research Institution | 大分医科大学 |
Principal Investigator |
藤岡 利生 大分医科大学, 医学部, 助教授 (90145368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 利博 大分医科大学, 医学部, 助手 (30244172)
村上 和成 大分医科大学, 医学部, 助手 (00239485)
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Keywords | Helicobacter pylori / 日本猿 / 持続感染モデル / 萎縮性胃炎 / 細胞回転 / 胃癌 |
Research Abstract |
既に我々が確立したHelicobacter pylori(HP)持続感染モデルを用いて3年間の長期経過を観察した。日本猿13頭を用いて6頭にHPを接種し感染群とし、HPを接種しない7頭をコントロール群として、胃内視鏡を用いて胃粘膜のHPの推移および背景胃粘膜の変化を経時的に観察した。3年間の観察期間を通じて感染群においてHPの持続感染が確認され、組織学的胃炎が持続した。コントロール群においてはHPの感染および胃炎の所見は認められなかった。 Rauwsらの基準による胃炎スコア、胃粘膜上皮細胞内のPAS陽性物質量および胃腺高を胃生検標本を用いて検討した。胃炎スコアは接種1週後に強いピークを示して上昇し、その後徐々に低下するも全経過を通じてコントロール群と比較して有意に高値を示し、組織学的胃炎の持続が確認された。胃粘膜上皮細胞内のPAS陽性物質量は感染群において有意に低値を示しHPの胃粘膜に対する病原因子として重要である。胃腺高は接種後1.5年より接種前と比較して有意に低下し始め、HPの感染により萎縮性胃炎が進展する事が示された。胃粘膜上皮細胞中のBromodeoxyuridine(BrdU)陽性細胞の出現頻度が感染群において有意に増加しており、HP感染により胃粘膜上皮細胞の細胞回転は亢進する事が明らかになった。これらの実験的な事実は、HPの持続感染が胃粘膜の萎縮性変化を引き起こし更に細胞回転を亢進させる事により胃癌の発症へとつながる可能性を示唆するものであり、今後本実験モデルの長期的な観察が重要である。
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[Publications] Toshio Fujioka: "Experimental model for chronic gastritis with Helicobacter pylori:long-term follow-up study in H.pylori-infected Japanese macagues." European Journal of Gastroenterology Hepatology. 5. S73-S77 (1993)
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[Publications] 藤岡利生: "Helicobacter pylori 感染の動物モデル" Journal of Gastrointestinal Research. 2. 38-44 (1994)