1994 Fiscal Year Annual Research Report
肝硬変の成立・進展機序に関する研究-類洞壁細胞アクトミオシン系の解析を中心に
Project/Area Number |
05670495
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
織田 正也 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20129381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船津 和夫 慶應義塾大学, 医学部内科, 兼任講師 (00129644)
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Keywords | 肝類洞内皮細胞 / 伊東細胞 / Kupffer細胞 / 収縮運動 / endothelia / nitric oxide / 超微速度映画 / 肝硬変 |
Research Abstract |
9.研究実績の概要 平成6年度の研究は、第一に肝類洞壁構成細胞である伊東細胞のpericyteとしての自発収縮運動の解析に向けられた。初代分離培養伊東細胞に対して血管収縮物質であるendothelin(ET)-1,ET-3の反応を超微速度映画撮影で観察した結果、伊東細胞の収縮運動はET-1,ET-3のいずれによった増強し、収縮回数も増加した。この収縮運動に関する定量的解析は超微速度映画のコマをコンピュータ画像解析装置に入力し、各時点における細胞の面積を算定することにより行われた。一方、初代分離培養Kupffer細胞はアメーバ様運動を行ないながら、速やかな移動能を有し、位相差顕微鏡下でしばしば鑑別が困難な伊東細胞から容易に区別された。初代分離培養類洞内皮細胞は前二者に比べ最も運動性に乏しく、ET-1,ET-3によった特に節板状小孔が収縮することが走査型電子顕微鏡観察により明らかにされた。以上、三種類の類洞壁細胞の収縮運動はactinの重合阻害物質であるcytochalasinBの添加により速やかに停止し、cytochalasinBの除去により速やかに回復した。FITC-microsphereあるいはFITC-endotoxinを用いた貧食機能の蛍光顕微鏡観察では、それぞれ初代分離培養においてKupffer細胞が最も強い貧食能を示し、さらには類洞内皮細胞も貧食能をもつことが判明した。これらの貧食機能は透過型および走査型電子顕微鏡観察によるmicrosphere細胞への取込み像から裏付けられた。こられの現象はいずれもin vivoの実験系でも証明された。分離伊東細胞と類洞内皮細胞の混合培養系のおいて、血管内皮細胞由素弛緩因子であるnitric oxide(NO)の合成酵素阻害物質L-NMMAの添加によって伊東細胞の収縮運動が抑制されないことが証明された。慢性四塩化炭素障害硬変肝から分離された伊東細胞ではET-1,ET-3に対する収縮反応は低下し、同様に硬変肝由来のKupffer細胞ではアメーバ様運動機能の低下と共にFITC-endotoxin,FITC-microsphereの細胞内取り込みの著しい低下が認められ、一方類洞内皮細胞への取り込みは増加した。
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[Publications] 金子 博: "硬変肝におけるアミン作動性およびペプチド作動性神経の分布" 自律神経. 31. 111-117 (1994)
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[Publications] 織田 正也: "肝類洞内皮細胞と細胞骨格-内皮細胞小孔の収縮運動とその意義" 医学のあゆみ. 169. 714-721 (1994)
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[Publications] Kazemoto,S: "Involvement of capsaicin-sensitive neurons in the peptidergic nervous control of hepatic microcirculation in the rat." Microcirculation annual. 10. 107-108 (1994)
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[Publications] Nishizaki,Y.: "Impairment of gastric mucosal defense measured in vivo in cirrhotic rats." Hepatology. 20. 445-452 (1994)
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[Publications] 織田 正也: "肝硬変・肝細胞癌の微小循環" 現代医療. 26. 181-189 (1994)