1995 Fiscal Year Annual Research Report
肝硬変の成立・進展機序に関する研究-類洞壁細胞アクトミオシン系の解析を中心に
Project/Area Number |
05670495
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Research Institution | Department of Internal Medicine, School of Medicine, Keio University |
Principal Investigator |
織田 正也 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20129381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船津 和夫 東京歯科大学, 歯学部, 助教授 (00129644)
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Keywords | prostaglandin (PG) E1 / endothelin (ET) -1,3 / 肝類洞内皮細胞 / 伊東細胞 / 細胞質内遊離カルシウムイオン / Ca^<++>-ATPase / 肝類洞血流 / 肝硬変 |
Research Abstract |
本研究最終の平成7年度は、まず研究目的の一つであるprostaglandin (PG) E_1の肝微小循環系へ及ぼす影響についてin vivoおよびin vitroで検討した。全身血圧に影響を及ぼさないPGE_1の用量(50ng/min/100gb.w.)をラットの腸間膜静脈枝カテーテルから持続注入すると、laser doppler法で測定した肝類洞血流量は明らかに増加し、類洞内皮細胞小孔(sinusoidal endothelial fenestrae: SEF)は拡張することが走査型電顕観察により明らかとなった。さらに電顕細胞化学的手法によってCa^<++>-ATPase活性の局在の変化を解析した結果、類洞内皮細胞および伊東細胞の形質膜に同酵素活性の著しい増強が新たに証明された。初代分離培養を施した類洞内皮細胞と伊東細胞に対してin vitroでPGE_1(10^<-8>M)を作用させ、fura2-AMを用いたmicrofluometric analysisにより細胞質内遊離カルシウムイオン濃度[Ca^<++>]_iの変化をdigital imageprocessor (Argus 100)で解析すると、いずれの細胞においても[Ca^<++>]_iが低下した。すなわち、PGE_1は類洞内皮細胞あるいは伊東細胞に直接作用し、形質膜上のCa^<++>-ATPase活性の発現の増強を介して細胞質内遊離Ca^<++>の細胞外へのくみ出しを促進すると考えられる。その結果、平成5年度の研究で証明された細胞内Ca^<++>-calmodulin-actomyosin系の収縮反応が抑制され、細胞の弛緩、すなわちSEFの拡張と伊東細胞のトーヌスの低下が起こり、類洞の血管抵抗の減少に伴って類洞血流が増加するという推論が成り立つ。一方、強力な血管収縮物質であるendothelin (ET) -1、ET-3によって肝類洞血流量は著しく減少し、SEFは収縮することが明らかにされた。この現象には、平成6年度にin vitroでET-1、ET-3、によって証明された伊東細胞収縮運動の増強が関与する。実験的四塩化炭素傷害肝硬変ラットにおいてもET-1、ET-3投与時と同様に類洞血流の低下とSEFの径と数の減少が起こる。この肝硬変におけるこの減少の発現機構解明を目的に、硬変肝由来の初代分離培養類洞内皮細胞、伊東細胞、Kupffer細胞においてPGE_1、ET-1、ET-3作用時の[Ca^<++>]_i、Ca^<++>-ATPase活性の変化並びに細胞の動的、超微形態学的変化について現在検討中である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 塚田信廣: "肝類洞内皮細胞内のactin, myosin-II, Ca^<++>-ATPaseの局在" 肝細胞骨格研究会誌. 4. 1-11 (1994)
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[Publications] 風本真吾: "肝類洞内皮細胞の異物処理機能-in vivoおよびin vitoroの検討-" 肝類洞壁細胞研究の進歩. 6. 33-39 (1994)
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[Publications] Kamegaya, Y.: "Evidence for the spontanous contractility of Ito cells-Time-lapse cinematography and computarized image analysis." Cells of the Hepatic Sinusoid. 5. 306-307 (1995)
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[Publications] 織田正也: "肝類洞内皮細胞の構造・機能とその調節機構" BIO Clinica. 11. 23-28 (1996)
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[Publications] Oda, M.: "Liver Innervation" T. Shimazu, 10 (1996)
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[Publications] Marzi, I.: "Microcirculation in Clinical Medicine" J. H. Barker (in press),