1993 Fiscal Year Annual Research Report
Cytochrome P4502E1の遺伝子解析の臨床的意義
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05670503
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
堤 幹宏 金沢医科大学, 医学部, 講師 (00155425)
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Keywords | P4502E1 / Genotype / 食道癌 / 胃癌 / 大腸癌 / 遺伝的多型 |
Research Abstract |
Cyochrome P4502E1は、非ADH系でのアルコール代謝のkey enzymeであるが、P4502E1遺伝子の5′-franking regionにpoint mutationのあることが報告され、P4502E1の遺伝子型が各種疾患の発生の差に関与する可能性が考えられている。そこで、消化器系疾患患者について、P4502E1遺伝子の多型性を検討した。健常者26例、肝疾患63例、食道癌5例、胃疾患47例および大腸疾患患者17例についてP4502E1の遺伝的多型の分析を行った。方法は、抹梢白血球より抽出したDNAについて、RT-PCR法とRFLPs法により、c1 geneのhomozygote(type A)、c2 geneのhomozygote(type C)、および両者のheterozygote(type B)の3型に分類した。健常者ではtype Aが69%に、type Bが31%にみられた。肝疾患患者では、AL性肝障害患者と非AL性肝障害患者でP4502E1のgenotypeの頻度は明らかに異なっていた。すなわち、非AL性肝障害患者では、type Aが64%に、type Bが36%にみられ、各genotypeの頻度は健常者のそれと差はみられなかったが、AL性肝障害患者では、type Aは1例もみられず、すべてtype Bあるいはtype Cであり、これらの頻度は非AL性肝障害患者のそれに比して有意に高率であった。肝疾患以外の各疾患患者についてみると、食道癌患者では、5例中4例(80%)がtype Bで、1例のみがtype Aであり、type Bの頻度は健常者のそれに比して有意に高率であった。一方、胃疾患患者では、type Aが72%に、type Bが28%にみられ、各genotypeの頻度には潰瘍性病変、良性の隆起性病変および癌患者との間に差はみられず、健常者のそれらの頻度とほぼ同様であった。大腸疾患患者では、いずれの疾患においてもtype Aの頻度は83〜100%と高く、健常者のそれに比して有意に高率であった。以上のごとく、消化器疾患についてP4502E1の遺伝子型を検索すると、c2 geneがアルコール性肝障害の発生に強く関与しており、食道癌および大腸癌の発生にも影響を及ぼしている可能性が考えられた。
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[Publications] 堤,幹宏、他: "大酒家における消化器癌の発生要因." アルコールと医学生物学. 13. 173-177 (1993)
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[Publications] Tsutsumi,M.,et al.: "Genetic factors related to the development of carcinoma in digestive organs in alcoholics." Alcohol and Alcoholism,. (in press). (1994)