1993 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄県住民におけるHTLV-1感染者の肺病変に関する研究
Project/Area Number |
05670532
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
斉藤 厚 琉球大学, 医学部, 教授 (90039842)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 和義 琉球大学, 医学部, 助手 (10253973)
普久原 浩 琉球大学, 医学部, 助手 (10218951)
兼島 洋 琉球大学, 医学部, 助手 (00185943)
中村 浩明 琉球大学, 医学部, 助手 (10189053)
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Keywords | 沖縄県 / HTLV-I / 肺病変 / びまん性汎細気管支炎 / 特発性間質性肺炎 / 気管支肺胞洗浄 / T細胞株 / CD3 |
Research Abstract |
当科に1988年〜1993年までの6年間に入院した患者の中でHTLV-I抗体陽性者は294人で総入院患者の16.8%を占めていた。男性163人、女性131人で男女比は 1.24:1であった。平均年齢は59.1±15.3才で抗体陰性者の51.0±16.0才に比べやや高い傾向にあった。主要な呼吸器疾患との関係では、HTLV-I抗体陽性者の中でびまん性汎細気管支炎(DPB)、特発性間質性肺炎(IIP)、慢性気管支炎、肺結核症の発生頻度は各々1.36%、4.08%、6.12%、4.42%であり、抗体陰性者の0.34%、1.30%、2.33%、2.60%に比べ高い傾向にあった。しかし膠原病にともなった間質性肺炎や薬剤性肺炎の場合は抗体陽性者の0.34%、陰性者の0.69%のように特発性の場合と異なっていた。一方、原発性肺癌、気管支喘息、サルコイドーシスでは抗体陽性者の5.28%、3.06%、0.70%に対して、陰性者は4.91%、5.21%、1.13%であり差がないかむしろ抗体陰性者の方が多い傾向にあった。このようにDPB、IIP、慢性気管支炎、肺結核症ではHTLV-I感染と何らかの関係があるように思われた。さらに、DPBの場合年齢が抗体陽性者54.8±14.6才、陰性者74.8±2.3才と有意に若く、本ウィルスに感染することにより発病が促進される可能性が考えられ興味深い。しかしIIPでは抗体陽性者 61.4±8.9才、陰性者60.8±9.0才と差がなかった。 基礎的研究として、HTLV-I抗体陽性者のBALFよりコンビナントIL-2の存在下にT細胞株を樹立し、同時期に同一患者の末梢血より樹立したT細胞株と表面マーカーを比較検討したところ2例において末梢血に比べBALF中のT細胞のCD3の発現量の減少が観察された。本ウィルス感染細胞が発癌する過程でCD3の発現量が減少することが知られていることから、末梢血に先立って肺内で感染細胞が発癌する可能性も考えられた。次年度には、これらの細胞のproviral DNAのintegrationの有無とmonoclonalityについて解析していきたい。またBALFより樹立したT細胞株をSCIDマウスに移入することにより肺病変の形成を有無についても調べたい。
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