1993 Fiscal Year Annual Research Report
オレイン酸急性肺傷における肺胞レベルの拡散障害に関する研究
Project/Area Number |
05670535
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山口 佳寿博 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30129712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高杉 知明 應義塾大学, 医学部, 助手 (50236220)
森 正明 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10220021)
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Keywords | 肺水腫 / 拡散障害 / 換気・血流比分布 / 不活性ガス / ガス交換効率 |
Research Abstract |
【目的】肺水腫を伴う急性肺損傷において肺胞レベルのガス交換効率規定因子として拡散障害が有意に関与するか否かを検討した。【方法】ビーグル犬20頭を用いた。動物にオレイン酸を静注して肺水腫を伴う急性肺損傷を作成した。オレイン酸静注前と静注後90分目に微量のエチレン、アセチレン、フレオン22を含む生食を末梢静脈から一定速度で注入し、恒常状態において呼気、動脈血、混合静脈血中の3種不活性ガス濃度をガスクロマトグラフを用いて測定した。これらの測定値をもとに3種不活性ガスの呼気中への排泄率を求め健常肺ならびに水腫肺の肺胞レベルにおいて拡散障害がガス交換効率を修飾しているか否かを検討した。エチレンとアセチレンはほぼ同じ分子量を有するため肺胞膜、水腫液中のガス拡散係数は相等しくこの2種のガスの呼気排泄率の差は主として肺内換気・血流比(V_A/Q)分布によってもたらされたものと考えることができる。一方、フレオン22とアセチレンはその血液・ガス分配係数がほぼ等しいがそのガス拡散係数に有意な差異を認める。即ちフレオン22とアセチレンの呼気排泄率の差は主として肺胞レベルの拡散抵抗に起因するものと考えることができる。しかしながらフレオン22とアセチレンの血液・ガス分配係数には無視できない差が存在し両者の排泄率の差をもって単純に拡散障害が存在するとは結論できないことが指摘されている。そこで本研究ではエチレンとアセチレンの排泄率実測値からV_A/Q分布のみによってもたらされるフレオン22の排泄率を予測しこの予測フレオン22排泄部と実測フレオン22排泄率との差を用いて肺胞レベルの拡散障害を確実に検出することを試みた。【結果】(1)オレイン酸静注前の健常肺では予測フレオン22の排泄率と実測排泄率との間には有意な差は認めなかった。(2)オレイン酸静注後の水腫肺における予測フレオン22の排泄率は実測排泄率に較べて有意に高値を呈した。【結論】以上の実験事実より、健常肺では肺胞レベルの拡散障害は無視できるほど少ないが水腫肺においては肺胞隔壁間質ならびに肺胞腔に漏出した水腫液に起因する拡散障害が有意に存在することが明かとなった。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 山口佳寿博: "肺内ガス交換障害に対する拡散障害の影響-オレイン酸急性肺損傷における解析-" 日本胸部疾患学会雑誌. 31. 580-586 (1993)
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[Publications] 森 正明: "急性損傷肺のガス交換障害におよぼすcyolooxygenase代謝産物の影響" 慶應医学. 70. 71-80 (1993)
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[Publications] K.YAMAGUCHI: "Regulation of blood flow in pulmonary microcirculation by vasoactive arachidonic acid metabolites" Adv.Exp.Mid.Biol.acieptid for pulilication. 113-120 (1994)