1993 Fiscal Year Annual Research Report
培養脳切片標本における神経回路形成とその可塑性に関する研究
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05670553
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桜井 正樹 東京大学, 医学部(病), 講師 (30162340)
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Keywords | 脳切片培養 / 神経成長 / シナプス形成 / 線条体 / ドパミンニューロン / 黒質線条体投射 / 大脳皮質線条体投射 |
Research Abstract |
ラットの大脳皮質,線条体,また,ドパミン(DA)含有細胞のある中脳腹吻側部よりスライスを作成し,これらをコラーゲン被覆した薄膜上の液相気相境界部に数100μm間隔で置き,無血清下に共培養した.これらスライス間は数日のうちに突起が伸びて架橋され,少なくとも4週間維持された.大脳皮質・線条体・中脳腹吻側部スライスの共培養に成功した報告はこれまでになく,これは初成功例と思われる. DA細胞とその突起はチロシン水酸化酵素に対する抗体を用いた免疫組織化学的手法で可視化した.胎生14日(E14)ではDA細胞は遊走して中脳部より抜け出すが,E15になると,中脳に止まって突起を伸ばし,線条体内には網目状の突起をにはりめぐらして,E14-15間に細胞の性質が大きな変化をすることが示唆される.中脳の単独培養では突起の伸展が乏しく,線条体由来の栄養物質の存在が示唆される.しかし,中脳と線条体,小脳もしくは海馬の共培養では突起の伸展方向が線条体に片寄っておらず,この栄養因子の作用は拡散が容易で濃度勾配を作りにくいものであることが推測される. 大脳皮質と線条体の神経結合の観察には蛍光色素Dilの順行性・逆行性標識を用いた.大脳皮質から線条体への投射細胞は主として5層,一部3層に由来しており,in vivoにおける皮質-線条体間の層特異性がin vitroにおいても保たれていることが示された.一方,線条体から大脳皮質へ向かう線維も多数みられた. この新たに開発された標本が大脳皮質・線条体・中脳DA細胞間の神経結合の形成・動作・維持機構の生理と病態生理の研究・解明に寄与することが期待される.
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