1994 Fiscal Year Annual Research Report
培養脳切片標本における神経回路形成とその可塑性に関する研究
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05670553
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
桜井 正樹 東京大学, 医学部(病), 講師 (30162340)
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Keywords | 脳切片培養 / 神経成長 / シナプス形成 / 線条体 / ドパミンニューロン / 黒質線条体投射 / 大脳皮質線条体投射 / シナプス可塑性 |
Research Abstract |
ラットの大脳皮質-線条体-中脳腹吻側部のスライスを無血清下で共培養(co-culture)し,それらの間に神経結合を形成することに成功した.抗チロジン水酸化酵素(TH)抗体を用いた免疫組織化学的方法により,培養中脳スライスには多数のTH陽性細胞が存在し,共培養した線条体に突起を伸ばし,線条体内に密な線維網を張りめぐらすことが観察された.E_<13-14>ではかなりの数の細胞体が線条体内部に遊走するが,E_<15>以後では中脳内部に留まり,そこから突起を伸ばしていた.この短期間に細胞の性質に大きな変化が生じることが示唆される.一方,この突起伸長には共培養されるスライスによる大きな差があり,小脳,海馬CA1-3領野にはごく少量の突起伸長しかみられず,in vivoにおける投射関係の部位特異性が保たれていることが示された.線条体には何らかの突起の成長・分枝を促進する因子が存在するか,あるいは,小脳や海馬にはそれらを抑制する因子が存在することが示唆される.蛍光色素Dilを用いた逆行性ラベルにより,皮質から線条体への投射細胞は主として皮質深層に存在することが示された.この投射関係の特異性は拡散可能な液性因子によって規定されていることが示唆される.この新たに開発された標本が大脳皮質・線条体・中脳DA細胞間の神経結合の形成・動作・維持機構の生理と病態生理の解明に寄与することが期待される。 また、引続き急性の海馬スライス標本を用いて、海馬長期増強(LTP)の研究を行い、Mg^<2+>非存在下での1Hz刺激で生ずるLTP(1HzLTPと命名)が刺激回数2-3回の付近にLTP出現の闘値を有すること、また、これがテタヌス刺激によるLTPと閉塞し、両者が共通の機序によることを示した。このLTPがGABAやGABAA受容体特異的動薬で阻害されることを示し、LTPの誘導には、NMDA受容体チャネルのMgブロックの解除以外にシナプス後細胞の脱分極が必須であることを示した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Yoshioka,N.& Sakurai,M.: "Postsynaptic depolarization in induction of long-term potentiation in the CA 1 hippocampus" NeuroReport. 6(in the press). (1995)
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[Publications] Yasufuku-Takano,J.,Sakurai,M.et al.: "Successful treatment of intractable tardive dyskinesia with botulinum toxin" J.Neurol.Neurosurg.Psychiat.(in the press). (1995)