1995 Fiscal Year Annual Research Report
筋萎縮性側索硬化症における痴呆症状発現の病態生理(海馬におけるイノシトール1,4,5三リン酸受容体(IP_3)およびリアノジン受容体の変化について)
Project/Area Number |
05670572
|
Research Institution | KEIO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
田中 耕太郎 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (90129528)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 栄一郎 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00255457)
野崎 博之 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (80218312)
近藤 太郎 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (40234942)
|
Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / 痴呆 / イノシトール1,4,5三リン酸受容体 / 海馬 / リアノジン受容体 |
Research Abstract |
本年度は、1型イノシトール1,4,5-三リン酸(IP_3)受容体の生理学的機能を分析する目的で、東京大学医科学研究所の御子柴教授のもとで開発された同受容体を欠損したマウス(Matsumoto et al. Nature 379: 168-171, 1996)の、IP_3結合能および行動様式を観察した。野生型マウスでは、脳内IP_3結合は、我々が既に砂ネズミで報告しているごとく、小脳皮質で最も高く(674±73fmol/mg)、海馬CA1(375±71fmol/mg)や線条体(357±63fmol/mg)がそれに次いで高い値を示していた。一方、1型IP_3受容体欠損マウスでは、脳内IP_3結合は、小脳皮質で133±29fmol/mg、海馬CA1: 209±74fmol/mg、線条体: 114±32fmol/mgと有意に減少していた。残存していたIP_3結合は、2型や3型などのIP_3受容体によるものと考えられた。この1型IP_3受容体欠損マウスは胎内でかなりの割合が死亡するが、生まれてきたものでは生直後は特に行動異常は認められなかった。しかし、生後9日目より小脳失調症状が出現し、歩行が不安定化した。更に生後15日頃より躯幹をねじ曲げる姿勢異常が出現し、生後20-23日後より繰り返す強直間代発作が明らかとなり、脳波上大脳にて棘徐波の広範な出現が観察された。またオピストトーヌスも間歇的に出現し、生後25日前後で死亡した。上記痙攣発作はpentobarbitalで抑制され、diazepamで抑制された発作はflumazenil投与により再出現した。以上より、1型IP_3受容体は小脳による協調運動機能および大脳皮質を中心とした神経細胞興奮性の調節に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] NAGATA E, TANAKA K et al.: "Alteration of inositol 1,4,5-trisphosphate receptor six-hour hemispheric ischemia in the gerbil braiv." Neuroscience. 61. 983-990 (1994)
-
[Publications] 永田栄一郎,田中耕太郎他: "実験的脳虚血におけるイノシトール1,4,5三リン酸受容体の変化" 臨床神経. 33. 726-732 (1993)
-
[Publications] 野崎博之,田中耕太郎他: "砂ネズミ脳虚血におけるRyanodine受容体の変化に関する研究" 神経化学. 32. 82-83 (1993)
-
[Publications] TANAKA K, FUKUUCHI et al.: "Reduction in second-messenger ligand binding sites after brain lschemia." Brain Res Bull. 32. 49-56 (1993)
-
[Publications] MATSUMOTO M, NAGATA E, TANAKA K et al.: "Ataxia and epileptic seizures in mice lackinf typel inositol 1,4,5-trisphosphate receptor." Nature. 379. 168-171 (1996)
-
[Publications] 野崎博之,田中耕太郎他: "脳虚血における脳内Ca^<2+>誘発性Ca^<2+>放出チャンネルの変化" 脳卒中. 17. 306-314 (1995)