1994 Fiscal Year Annual Research Report
発達期の脳におけるイノシトールリン脂質情報伝達系の分布と機能
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05670659
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Research Institution | National Institute of Neuroscience, NCNP |
Principal Investigator |
水口 雅 国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究第二部, 室長 (20209753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 光則 新潟大学, 脳研究所・実験神経病理学部門, 助手 (30240039)
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Keywords | 二次メッセンジャー / イノシトール三リン酸 / サイクリックADPリボース / CD38 / カルシウムイオン / 免疫組織化学 / 中枢神経系 |
Research Abstract |
ホルモンや神経伝達物質により細胞膜表面の受容体に伝えられた情報は二次メッセンジャー系を介して細胞内を伝達され、細胞の増殖、機能などを調節する。イノシトールリン酸系は、二次メッセンジャー系のうちでも、とくにその重要性が注目をあつめている系であり、その作用は細胞内のCa^<2+>を動員することにより発揮される。最近、同じく細胞内Ca^<2+>の動員をきたす二次メッセンジャーとして、サイクリックADPリボース(cADPR)が発見され、イノシトールリン酸系との相互関係の解明が急がれている。 われわれは今年度、cADPRの合成、加水分解の両方の酵素活性を有するタンパクCD38抗原に着目して、その脳内における発現、局在を検討した。CD38はリンパ球の分化抗原であり、従来より開発された複数のモノクローナル抗体により認識される膜タンパクである。しかしこれまでウエスタンブロットや一般の組織標本の免疫染色に応用可能な高力価の抗体がなかったことから、リンパ免疫系以外の組織、細胞における低レベルの発現に関する検討は進んでいなかった。われわれはCD38のアミノ酸配列にもとづいて、6種の合成ペプチド抗体を作製し、上記目的に沿う有用な抗体を開発し得た。これを用いて成人剖検例の脳から、免疫アフィニテイー法によりCD38抗原を精製し、また免疫染色により脳内のCD38が主としてPurkinje細胞などの神経細胞に局在していることを明らかにした。またアルツハイマー病患者の脳では、神経細胞内に存在する病的構造物神経原線維変化にCD38が大量に沈着していることを証明し得た。
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[Publications] 水口 雅ら: "ラット脳におけるCD38免疫反応性" Neuropathology. 14. S212 (1994)
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[Publications] Otsuka,N.et al.: "CD38 immunoreactivity in Alzheimer's neurofibrillary tangles." Brain Pathology. 4. 558 (1994)
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[Publications] Yamada,M.et al.: "Specific expression of inositol 1,4,5-trisphosphate 3-kinase in the dendritic spines." Brain Pathology. 4. 383 (1994)
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[Publications] Mizuguchi,M.et al.: "Expression of Bcl-2 protein in murine neural cells in culture." Brain Research. 649. 197-202 (1994)