1994 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病性腎症でみられるIV型コラーゲン蓄積の分子生物学的解明
Project/Area Number |
05670853
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
吉川 隆一 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (50093406)
|
Keywords | 糖尿病性腎症 / 糸球体硬化 / IV型コラーゲン / プロテインキナーゼC / MAPキナーゼ / IV型コラーゲンmRNA / 血管作働性物質 |
Research Abstract |
糖尿病性腎症の主病変とされる糸球体メサンギウム領域でのIV型コラーゲン蓄積の機序を明らかにするため、初年度は主にIV型コラーゲン産生系の検討を行った。 本年度は、主としてIV型コラーゲン分解系につき解析を実施した。糸球体メサンギウム領域に存在するIV型コラーゲンの分解は、同部位に存在するメサンギウム細胞が分泌するコラーゲン分解酵素(コラゲナーゼ)が担っていると考えられている。これまで、約10種類のコラーゲン分解酵素が同定されているが、IV型コラーゲンの分解を主に担っている酵素はメタプロテイナーゼ(MMP)の2型と9型であることが知られている。 そこで、培養ラットメサンギウム細胞にこれらIV型コラーゲン分解酵素が存在するか否かを検討した。MMP-2およびMMP-9に対するcDNAを用い、northern blot法によりそれぞれのmRNAを観察したところ、両酵素がメサンギウム細胞に存在することを確認した。しかしながら、27.8mMグルコースの高糖濃度条件で培養したメサンギウム細胞のmRNA量には有意の変化を見いだし得なかった。従って、少なくとも遺伝子発現のレベルで高糖濃度がIV型コラーゲン分解酵素に影響を及ぼているとの確証は得られなかった。なお、メタロフロテイナーゼの阻害物質であるTIMPのnorthen blottingも行ったが、本研究で用いたメサンギウム細胞実験では検出し得なかった。 以上の成績より、糖尿病における糸球体内IV型コラーゲン蓄積に、IV型コラーゲン分解系、少なくとも分解酵素遺伝子発現での変化が関与している可能性は少ないと思われた。
|