1994 Fiscal Year Annual Research Report
白血病細胞の細胞死と細胞分化におけるミトコンドリア遺伝子発現の関与の研究
Project/Area Number |
05670914
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Research Institution | Seinan Jogakuin University |
Principal Investigator |
工藤 二郎 西南女学院大学, 保健福祉学部, 助教授 (90148940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林田 一洋 九州大学, 医学部, 助手 (60180981)
石橋 大海 九州大学, 医学部, 助教授 (80127969)
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Keywords | ミトコンドリア / 細胞分化 / アポトーシス / NADH脱水素酵素 / 白血病 / ロテノン / ミトコンドリア阻害剤 / HC60細胞 |
Research Abstract |
50nMのロテノンのHL60細胞への添加にて細胞増殖の減弱がみられたが、7日後の生存率は97%を超えていた。細胞周期ではG2+M期の増加が顕著であった。一方、1.6nMのPMA添加では細胞は大部分付着するようになり、細胞周期ではS期が減少し、G1期が増加していた。5μMのロテノンでは細胞は3日でほぼ100%死亡した。この濃度では添加の6時間後にG2+M期の増加が顕著であった。興味あることにミトコンドリアのcytochrome c oxidaseの特異的阻害剤であるKCNを2mMの濃度で加えるとG2+M期の減少が起こり細胞は死亡した。 50nMのロテノンの添加にて細胞の表面抗原の変化を検討したところCD38陽性細胞を増加させ、CD13陽性細胞の蛍光強度を増加させた。一方、PMAはCD11b陽性細胞を増加させ、CD4陽性細胞を減少させた。 50nMロテノンの添加にてND2とCO1のmRNAは無添加細胞に比し、変化がみられない。しかしPMA添加細胞ではND2とCO1のmRNAはともに減少した。 HL60細胞に5μMのロテノンを添加して細胞の形態を観察したところ、36時間後には細胞はクロマチン構造を失い、核の分節化がみられ、電顕上でも12時間後にはマイクロビライの消失、核膜にそってのクロマチンの濃縮と胞体内の空胞形成がみられ、24時間後には核の分節化が起こっていた。DNAの電気泳動では6時間以後に200bpのladder形成が確認されアポプトーシスが証明された。一方、2mMのKCNではladder形成は起こらず、ネクローシスと考えられた。 この研究により軽度のミトコンドリア抑制によりHL60細胞の表面の形質が変化し、分化と類似の変化が現れることが明らかとなった。しかし、この変化は今までに知られているPMAやDMSOによる分化とは大きく異なっており、細胞の機能的・形態学的な変化の状態や可逆的か否かも不明である。さらに興味ある結果は、ミトコンドリア阻害剤のNADH脱水素酵素の特異的阻害剤であるロテノンとcytochrome c oxidaseの特異的阻害剤であるKCNは、同様にcytosolic ATPの抑制を起こすにもかかわらず、細胞死の様態が前者ではapoptosisであり、後者ではnecrosisであったことである。
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[Publications] T.Matsunaga,J.Kudo,et al.: "Rotenone,a Mitochondrial NADH Dehydrogenase Inhibitor,Induces Cell Surface Expression of CD13 and CD38 and Apoptosis in HL-60 Cells." Leukemia and Lymphoma. (in press). (1995)