1993 Fiscal Year Annual Research Report
肝切除術後に出現した抗組織因子抗体のエピトープの同定および阻害機序の解明
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05670915
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
津田 博子 九州大学, 医学部, 助手 (30180003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩永 貞昭 九州大学, 理学部, 教授 (90029942)
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Keywords | 組織因子 / VII因子 / 阻害抗体 |
Research Abstract |
外因系血液凝固反応は、VII(a)因子が、血管内皮細胞あるいは単球、マクロファージなどの膜上に提示された組織因子(TF)と複合体を形成することにより惹起される。このVII(a)因子とTFの分子間相互作用部位の決定は、外因系凝固反応の機作を知るうえで中心課題の一つである。 我々は肝切除術を受けた患者の一部に、術後一過性にウシとウサギTFの活性を阻害するが、サルとヒトTFの活性を阻害しない抗体(IgGlambda-タイプ)が出現することを発見した。このことは、この抗TF抗体がTF分子上の種特異性を示す部位に結合することにより、TF-VII(a)因子複合体の形成を阻害することを示唆している。本抗体の阻害機序を解明するために、ヒト血漿よりモノクローナル抗VII因子抗体カラムにてVII因子を精製し、これにヒトXIIa因子を作用させてVIIa因子を得た。ウシTF-VIIa因子複合体によるX因子活性化に対する患者IgGの阻害効果を検討したところ、KmとVmaxを共に低下させるnoncompeitive inhibitorであることが判明した。即ち、本抗体はTF分子上のVIIa因子との結合部位に作用することにより、阻害することが示唆された。 近年我々は、ヒトTFのcDNAを用いて、酵母での可溶性TFの発現に成功した。この発現系を用いて、ウシTFの細胞外ドメインに対応するcDNAをpAM82に挿入した発現ベクターを作成し、これを用いて酵母AH22株を形質転換した。得られた培地より、CM-Sepharoseカラムを用いてウシ可溶性リコンビナントTFの大量調整に成功した。このウシ可溶性TFは、N末端側から213番目のアミノ酸までで構成されている。患者に出現した抗TF抗体がウシ可溶性リコンビナントTFに結合することを、ウェスタンブロッティング法にて確認した。現在、ウシ可溶性リコンビナントTFをプロテアーゼで限定分解後のペプチド断片と、抗TF抗体との結合をドットブロッティング法にて検討中である。 さらに、本抗TF抗体の出現機序については、肝切除術中に局所の止血のために多量に用いられたウシ真皮由来のコラーゲン製剤の中に混入した変性ウシTFが免疫原となったことを、ウェスタンブロッティング法を用いて明かにした。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Tsuda,H.: "Development of anti-tissue factor antibodies in patients following liver surgery." Blood. 82. 96-102 (1993)
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[Publications] Tokunaga,F.: "Limulus hemocyte transglutaminase:Its purification and characterization and identification of the intracellular substrates." Journal of Biogical chemistry. 268. 252-261 (1993)
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[Publications] Tokunaga,F.: "Limulus hemocyte transglutaminase:cDNA cloning,amino acid sequence,and tissue localization." Journal of Biogical chemistry. 268. 262-268 (1993)
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[Publications] Nishimura,H.: "Factor IX Fukuoka:Substitution of Asn-92 by His in the second epidermal growth factor-like domain results in defective interaction with factors VIII/X." Journal of Biogical chemistry. 268. 24041-24046 (1993)
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[Publications] Muta,T.: "Horseshoe crab coagulation factor B:A unique serine protease zymogen activated by a cleavage between Ile-Ile bond." Journal of Biogical chemistry. 268. 21384-21388 (1993)
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[Publications] Kawabata,S.: "Rabbit liver microsomal endopeptidase with substrate specificity for processing proproteins is structually related to rat testes metalloendopeptidase 24.15." Journal of Biogical chemistry. 268. 12498-12503 (1993)
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[Publications] 津田博子: "消化器病とプロテアーゼ・インヒビター" 株式会社へるす出版, 222 (1993)
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[Publications] 津田博子: "ウィリス動脈輪閉塞症" シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社, 173 (1993)