1994 Fiscal Year Annual Research Report
肝切除術後に出現した抗組織因子抗体のエピトープの同定および阻害機序の解明
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05670915
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
津田 博子 九州大学, 医学部, 助手 (30180003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩永 貞昭 九州大学, 理学部, 教授 (90029942)
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Keywords | 組織因子 / VII因子 / 阻害抗体 |
Research Abstract |
我々は肝切除術を受けた患者の一部に、術後一過性にウシとウサギのTF活性を阻害するが、サルとヒトのTF活性を阻害しない抗体(IgGλ-タイプ)が出現することを発見した。このことは、この抗TF抗体がTF分子上の種特異性を示す部位に結合することにより、TF-VII(a)因子複合体の形成を阻害することを示唆している。 ウシTFの細胞外ドメインに対応するcDNAをpAM82に挿入した発現ベクターを作成し、酵母AH22株を形質転換した。得られた培地より、CM-Sepharoseカラムを用いてウシ可溶性リコンビナントTFの大量調製に成功した。このウシ可溶性TFは、N末端側から213番目のアミノ酸までで構成されている。ウシ可溶性TFをトリプシンで短時間消化すると、Arg129-Ala130のペプチド結合が切断され、アミノ末端側とカルボキシル末端側の2つのドメインに分解された。ウェスタンブロッティング法による検討にて、本TF抗体が2つのドメインをともに認識することが分かった。 ウシ可溶性TFをシアン酸カリウムで処理すると、そのVIIa因子合成基質水解活性の増強効果は時間とともに消失し、VIIa因子との結合能が消失することがリガンドブロッティングにより判明した。この修飾TFをトリプシン消化後、逆相HPLCでペプチドマッピングを行ったところ、Lys-17のε-アミノ基のカルバミル化によって、可溶性TFのVIIa因子に対する親和性が著しく低下することが明らかとなり、この残基がVIIa因子との相互作用に大きく寄与していることが推定された。 TF分子のアミノ末端側とカルボキシル末端側のそれぞれ100アミノ酸残基からなる2つのサブドメインに、VII(a)因子結合部位が含まれていると考えられる。ヒト、ウシ、ウサギ、マウスのTFのアミノ酸配列を比べると、残基番号81-90の領域と残基番号197-218の領域で相同性が低く、こうした領域がTFの種特異性に関連が深いと推定される。従って、肝切除術後に出現した本抗TF抗体は、これらのドメイン上に存在する2つのVII(a)因子結合部位と結合することにより、明確な種特異性を示してウシTFとヒトVII(a)因子との複合体形成を阻害したものと考える。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Iwasaka,M.: "Effecis of magnetic field on fibrinolysis." J.Appl.Phys.75. 7162-7164 (1994)
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[Publications] Higashi,S.: "Idcntification of regions of bovinc factor VII esscntial for binding to tissue factor." J.Biol.Chem.269. 542-547 (1994)
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[Publications] Kishan,L.A.: "Activation pcptide of human factor IX has oligosaccharide O-glycosidically linked to threonine residue at 159 and 169." Biochemistry. 33. 5167-5171 (1994)
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[Publications] 津田博子: "血液凝固線溶異常-糖鎖の多様性を中心に" 臨床検査. 39. 52-58 (1995)