1994 Fiscal Year Annual Research Report
B細胞腫瘍の病因および病態解析:とくに特異的な細胞株樹立にもとづく研究
Project/Area Number |
05670921
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松崎 博充 熊本大学, 医学部・附属病院, 講師 (30136725)
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Keywords | 多発性骨髄腫 / バ-キットリンパ腫 / 細胞株 / 癌遺伝子 |
Research Abstract |
我々は以前からB細胞腫瘍の病因及び病態解析の有力手段として、細胞株の樹立を試みている。今回は新たに多発性骨髄腫とバ-キットリンパ腫患者からの細胞株の樹立に成功、それを使用した病態解析を試みた。 1)多発性骨髄腫由来細胞株(KHM-11)を用いた解析。 KHM-11は高LDH血症を呈した骨髄腫患者由来の細胞株である(Leukemia8:1768-1773,1994)。従来高LDH血症を示す骨髄腫患者は予後が悪く、特殊な病像をとることが知られていた。患者血清LDH値は腫瘍量と相関することから、LDHは腫瘍細胞由来であることが考えられた。そこでまずKHM-11がapoptosisを生じることかどうか検討したところ、KHM-11はFas抗原陽性で、抗Fas抗体でapoptosisを生じることが判明した。さらに興味深いことに、KHM-11のcell lyzateでもapoptosisを生じることから、自己apoptosisの機序も存在することが示唆された。また患者のfresh cellを用いた解析では14例中10例がFAS抗原陽性で、8例中3例は抗Fas抗体でapoptosisを示した。apoptosisは細胞増殖機構と深くむすびついた現象であり、高LDH血症と予後不良を説明するものと考えられる。 2)バ-キットリンバ腫由来細胞株(KHM-10B)を用いた解析15EA05:KHM-10Bはnon-endemicバ-キットリンパ腫患者より樹立された。EBウイルスは陰性で、通常の染色体分析でc-myc(8q24)転座は認められなかったものの、その後のFISH法による検討で、masked t(8;22)転座の存在が示された。我々はこの細胞株の同調培養に成功し、c-mycが細胞周期independentに発現されていることを明らかにした。またc-mycとヘテロダイマーを形成するmaxも恒常的に発現されており、これらの異常発現がバ-キットリンパ腫の発症に関与しているものと考えられた。
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[Publications] 小沢昌彦: "胸水中への好中球浸潤と高LDH血症を伴った治療抵抗性の多発性骨髄腫の一例" 臨床血液. 35. 49-53 (1994)
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[Publications] Hiroyuki Hata: "Establishment of a monoclonal antibody to plasma cell : A comparison with CD38 and PCA-1" Clin.Exp.Immunol.96. 370-375 (1994)
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[Publications] 中橋栄太: "高心拍性心不全と高アンモニア血症を併発した若年発症形質細胞性白血病の一例" 臨床血液. 35. 756-760 (1994)
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[Publications] Hiroyuki Hata: "Establishment of a CD45-positive immature plasma cell line from an aggressive multiple myeloma with high serum lactate dehydrogenase." Leukemia. 8. 1768-1773 (1994)