1995 Fiscal Year Annual Research Report
造血器腫瘍における骨髄間質細胞のレチノイン酸レセプターの分子異常
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05670929
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
木崎 昌弘 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (20161432)
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Keywords | レチノイン酸 / レチノイン酸レセプター / 細胞分化 / 骨髄間質細胞 / 急性前骨髄球性白血病 |
Research Abstract |
当該年度は、ヒト骨髄間質細胞に対するレチノイン酸の影響(細胞増殖、M-CSF,GM-CSFなどのサイトカイン産生、RAR,RXRなどのレチノイドレセプターの発現等)を検討する最終年度であり、研究成果のまとめをするとともに、各レチノイドレセプターの血球分化、増殖に及ぼす影響についても検討した。すでに、レチノイドは正常ヒト間質細胞におけるM-CSF,GM-CSFの産生を転写レベルで調整し、骨髄間質細胞ではRARの発現は構成的であるにもかかわらず、RXRの発現が9-cis retinoic acidにより濃度依存性に増強することを報告した。そこで、各レセプターの生物学的意義をより明らかにするために特異的にRAR,RXRの転写活性を増強し得る合成レチノイドを種々作製し、血液細胞の増殖、分化に対する影響を検討した。その結果、RXR選択的合成レチノイドは骨髄性白血病細胞の増殖を抑制するが、分化は誘導せず、RAR選択的レチノイドのみが白血病細胞の分化を誘導した。また、この過程でレチノイン酸に不応となった急性前骨髄球性白血病(APL)よりレチノイン酸耐性白血病細胞株を樹立した。この細胞におけるRAR,RXR遺伝子の各エクソンを含む全coding regionをPCRにて増殖し、TAクローニングの後にsequencerにて塩基配列を検討したところ、RXR遺伝子には全く異常を認めなかったが、RAR遺伝子のコドン411のC→Tへの点突然変異を認めた。従って種々の生物活性を有するレチノイン酸の情報伝達において、骨髄間質細胞からのサイトカイン産生の調節にはRXRを介する経路が、また白血病細胞の増殖、分化機構やレチノイド耐性獲得に関してはRARを介するpathwayがより重要であると考えられた。
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[Publications] Kizaki M, et al.: "Mechanisms of retinoid resistance: possible role of cytochrome P450 and P-glycoprotein" Blood. 87. 725-733 (1996)
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[Publications] Kizaki M, et al.: "Effects of novel retinoid X receptor (RXR) selective ligands on myeloid leukemic differentiation and proliferation in vitro" Blood. (in press).
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[Publications] Nakajima H, et al.: "All-trans and 9-cis retinoic acid enhance 1,25-dihydroxyvitamin D3 induced monocytic differentiation of U937 cells." Leuk Res.(in press).