1993 Fiscal Year Annual Research Report
In vivo遺伝子導入による糸球体腎炎モデルの作製
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05670953
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 芳廣 大阪大学, 医学部, 講師 (60135473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金田 安史 大阪大学, 細胞生体工学センター, 助教授 (10177537)
上田 尚彦 大阪大学, 医学部, 講師 (70115997)
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Keywords | in vivo遺伝子導入 / 血小板由来増殖因子(PDGF) / Transforming growth factor(TGF-β) / センダイウイルス(HVJ) / レニン-アンギオテンシン系 / 糸球体硬化 |
Research Abstract |
単一の成長因子の糸球体内過剰発現により免疫学的機構を介さない糸球体腎炎のモデルを作製するため以下の実験を行った。まず糸球体腎炎の発症、進展においてその関連が注目されているPDGF,TGF-βのcDNAを含む発現ベクターを作製した。このプラスミドを核蛋白HMG-1とともにリポソームに封入し、その表面にHVJ(センダイウイルス)を配したHVJリポソームを作製し、ラット左腎動脈より注入してin vivo遺伝子導入を行った。そして遺伝子導入後3、5、7および28日後に腎を摘出し、固定後組織学的検討を行った。その結果、まず蛍光抗体法にて導入したPDGF,TGF-β蛋白の発現が糸球体に確認された。TGF-βのcDNAを導入したラットでは3日目から7日目まで糸球体の細胞外基質の有意の増加と軽度の細胞増殖を認めた。またPDGFのcDNAを導入したラットでは3日目より糸球体細胞の著明な増加を認め7日目で細胞数の増加は最高に達した。糸球体は一部分葉化し軽度の細胞外基質の増加を認めた。硬化の程度をあらわすmatrix indexは遺伝子導入後5日目でコントロールの0に対してTGF-β群で46.4、PDGF群で20.8であった。増加した細胞外基質は特異的な抗コラーゲン抗体を用いた免疫組織化学法によりIV型コラーゲンの他I型およびIII型コラーゲンを含むことが確認された。これらの間質型コラーゲンは通常の糸球体にはなく、ヒトの硬化糸球体において増加することが知られていることから、PDGF,TGF-β遺伝子導入により惹起された組織変化はヒトの糸球体硬化に質的にもきわめて類似し、実験モデルとしても役立つことが示された。そこでこの遺伝子導入モデルを用いて、糸球体硬化の増悪因子として臨床的にも注目されているレニン-アンギオテンシン系について糸球体への効果を検討した。ラットの腎にヒトレニンおよびアンギオテンシノーゲンの遺伝子を導入した。遺伝子導入した糸球体でメサンギウム基質の増加を認め、またメサンギウム細胞の形質転換の指標の一つとされているα smooth muscle cell actinの発現を確認した(現在論文準備中)。以上のようにin vivo遺伝子導入法を用いた新しい実験モデルを開発し、それを用いてサイトカイン、血管作働性物質の糸球体への直接効果を検討することに成功した。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Isaka Y,Fujiwara Y,Ueda N,Kaneda Y,Kamada T and Imai E: "Glomerulosclerosis induced by in vivo transfection of transforming growth factor-β or platelet derived growth factor gene into the rat kidney" Journal of Clinical Investigation. 92. 2597-2601 (1993)