1994 Fiscal Year Annual Research Report
血管壁の粘弾性特性のリアルタイム同定に基づく冠動脈拡張(PTCA)システムの開発
Project/Area Number |
05670989
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
坂庭 操 筑波大学, 医療技術短期大学部, 教授 (40134233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 道男 筑波大学, 構造工学系, 教授 (10016446)
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Keywords | PTCA / elasticity / computer / balloon |
Research Abstract |
昨年度に冠動脈血管の粘弾性測定のシステムを構築した。これは計測・制御コンピュータを中心に血管拡張バルーンへの注入系とバルーンの内圧測定系からなっている。このシステムによりステップ状に一定速度で一定量バルーンを拡張するものである。血管壁の粘弾性測定のためにはバルーン内圧を正確に迅速に測定することが基本的に要求される。昨年度の予備実験では圧測定部とバルーンの間に細長いチューブが介在するため拡張部の圧と測定圧との間に圧差が生じることが大きな問題点となることが明らかになった。 1 本年度はまずこの圧差についてシステムを線形電気回路に置き換えモデル解析したところ圧の推移は自然対数を含む関数で表現するのが最も適当であることがわかった。また実際の測定データもこれによく一致した。 2 この管路抵抗による圧の過渡現象を克服し現実の拡張部の圧のオンライン推定を行うためにオブザーバを設計した。このオブザーバシステムはノイズレベルがデータの1/10程度まで正しいパラメータ推定を行えることがわかった。 3 拡張操作中に最も重要なのはある血管内腔にあるバルーンが持つ圧の最終的な収束値である。これを早く知ることは血管壁の過度な破壊をきたさないよう安全に拡張を行う上でも、その狭窄の拡張に必要十分な注入量を知る上にも必要である。そこで圧力の遷移曲線を2種の数学モデルで表現し、またオブザーバから出力される値からの解析と合わせて比較したところ十分な精度で圧の収束値が得られた。ただ時間的推移や収束性などそれぞれの推定法に若干の問題が残された。 以上本年度の成果として1)バルーンの拡張と圧力の計測を自動化できた2)圧測定部とバルーンの管路抵抗によって生じる両者の圧力差を補正するためオブザーバを設計しバルーン内圧をオンラインで同定することが可能になった。3)狭窄環境で、ある注入量におけるバルーン内圧の最終収束値の推定が可能になった。これによって安全でかつ十分な拡張量を決定するための基礎ができたといえる。
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