Research Abstract |
1.(材料と方法)ウィスター系ラットの背部に,尾側を茎とする2×7cmの乱走型皮弁を作成後,以下の実験観察を行った。(1)皮弁挙上部(皮弁茎より2cm遠位)の血流量を,皮弁作成前・作成直後に測定し,血流量の変化をレーザー血流計で観察した。(2)皮弁作成後,1日,2日,3日,4日に皮弁茎を切断し,切断前・後の血流量を同様に観察した。また,同,7日での皮弁生着域を観察した。そして,この実験系を薬剤非投与群(対照群)とbFGF100mug/kg/day持続全身投与群(bFGF群)とで行った。2.(結果)(1)皮弁作成後の血流量推移をみると,皮弁作成後,測定部の血流量は作成前の1/3〜1/2に低下した。その後,同部の血流量は経日的に増加し,皮弁作成後4日には作成前の血流量値に回復した。(2)対照群での血流量変化と皮弁生着域は,皮弁作成後1,2日切断群では同,7日に皮弁は全て壊死化した。血流量も切断直後にほぼ途絶した。同,3日切断群では,皮弁は生着を見たが生着範囲は切断時に血流が確認された範囲よりは減少していた。血流量は切断前の30%以下に低下したが,血流の途絶を生じたものはなかった。同,4日切断群では皮弁の生着域は切断前に血流が確認された範囲が全て生着した。血流量は,切断前の30%に低下した。(3)bFGF群では,茎切断後1日と同,4日群は対照群とほぼ同様であった。しかし,同,2,3日群では皮弁は切断前に血流が確認された範囲で全て生着し,茎切断後の血流量も対照群に比し高値を示した.3.(考察および次年度計画)今回の観察で,皮弁茎の切断によって皮弁固有の血行を遮断しても,作成後4日を経過すれば周囲との血流再開によって皮弁は完全生着することが確認され,さらにbFGFはこの再開機序を明らかに促進することが観察された。今後は,血流量だけではなく光顕・電顕標本を用いた観察からこの血流再開機序の解明とこの機序を促進するbFGFの効果を観察する予定である。
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