Research Abstract |
材料と方法:体重300g前後のウィスター系雄ラット64匹の背部を脱毛後,尾側を茎とする2×7cmの乱走型皮弁を肉様膜を含めて挙上した。そして,内頸静脈にシリコンカテーテルを挿入後,5%パテントブルー0.2mlをカテーテルから注入,その30分後に皮弁のdye distance(DD)を測定した。実験群(各8匹)はbFGF100μg/Kd/day投与群と対照群である非投与群にわけ,bFGF投与群ではこれを径日的に持続点滴投与した。皮弁作成後1日,2日,3日,4日に皮弁茎を切断し,同7日に皮弁の生着域と観察した。また,皮弁茎切断時に皮弁茎部より2cm遠位の皮弁中央部における切断前・後の血流量を半導体レーザー組織血流計を用いて測定した。 結果:対照群における皮弁生着域では,皮弁作成後1日,および2日切断群では,それぞれ8皮弁中7皮弁で皮弁の全壊死を認めた。他方,3日切断群では2皮弁で皮弁茎部からDD近傍まで,6皮弁でその領域での部分生着を認め,平均皮弁生着面積は4.5±0.5(cm^2)であった。4日切断群では全ての皮弁は皮弁茎部からDD近傍まで生着し,その面積は7.1±0.3であった。bFGF投与群では1日切断群は対照群と同様の結果であったが,2日〜4日切断群では殆どの皮弁が皮弁茎部からDD近傍まで生着を示し,その面積はそれぞれ7.8±0.8,5.3±0.9,7.2±0.3であった。つぎに,皮弁茎切断前後の皮弁内血流量をみると,対照群の1日,2日群では切断後に血流は途絶した。3日群では切断前値の11.5±1.0(ml/100g/min)が切断後3.1±0.8に,4日群では10.5±0.9から3.8±0.7に低下したが血流は維持されていた。bFGF投与群では2〜4日切断群でそれぞれ8.7±1.1から3.2±0.8,8.5±1.1から1.7±0.3,10.5±0.9から3.8±0.7に低下したが,血流は維持されていた。 考察:本実験では,移植組織と移植床間の血行再開は,移植後3日で再開されること,そして,bFGFの投与によってその血行再開が促進されることが観察された。このことは,bFGFのもつ血管新生促進作用によって,移植組織と移植床間の血管系再構築が早期より生じる結果であると考えられた。
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