1993 Fiscal Year Annual Research Report
培養肝細胞を用いた広範肝切除後の残存肝細胞障害の研究
Project/Area Number |
05671060
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
川原田 嘉文 三重大学, 医療技術短期大学部, 教授 (40024814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横井 一 三重大学, 医学部・附属病院, 講師 (60174843)
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Keywords | 広範肝切除 / 残存肝障害 / 細胞培養 / 肝細胞 / プロスタノイド / PGI2アナログ / TxA2アナログ / TxA2合成阻害剤 |
Research Abstract |
広範肝切除切除後には血中TxB2や6-KFが高値を示し、肝不全発生例では術後24時間目より再上昇をきたすこと、また、PGI2アナグロやTxA2合成阻害剤の投与は、術後の肝不全の発生を抑制することを報告してきた。今回、培養細胞を用いchemical mediatorと肝切除後の肝障害との関係につき検討した。【実験I】犬を用いOP-2507(OP:PGI2アナログ),OKY-046(OKY:TxA2合成阻害剤)を前投与した後、84%肝切除を行い24時間後に肝実質細胞を分離し、細胞生存率、培養液中LDH、bleb形成率、ミトコンドリア機能、細胞内Ca^<++>及びcAMP、培養液中過酸化脂質、組織学的所見を検索。 〈結果-1〉非投与では肝細胞膜やミトコンドリア機能は正常肝に比し有意に障害されたが、OP並びOKY前投与ではこれらが良好に維持され、特にOPでその効果が著明であった。【実験II】84%肝切除施行後6時間目に肝実質細胞を分離し、OP,OKY及びSTA2(ST:TxA2アナログ)を添加し各薬剤の肝細胞に対する直接効果を検討。〈結果-2〉ST添加群では肝細胞膜やミトコンドリア機能の障害が著明、OP添加群では良好に維持され、肝細胞に対する直接保護作用が示唆された。一方、OKY添加群ではこのような作用はなく、肝実質細胞と肝非実質細胞との相互作用が示唆された。【実験III】84%肝切除後6時間目に肝細胞とKupffer細胞を分離し、さらにこれらの細胞のCo-Cultureを行い、OP及びOKYを添加して各薬剤の効果を検討。〈結果-3〉非添加ではKupffer細胞は著明に活性化されており、TxA2産生も亢進していたが、OP添加群ではKupffer細胞の活性化やTxA2産生が有意に抑制され、OKY添加群でもTxA2産生はOP同様に有意に抑制された。Co-Cultureでは非添加で肝細胞の障害は高度で、肝実質細胞単独培養に対すST添加群と同様の障害を示したが、OP及びOKY添加群では肝細胞障害は有意に抑制され、特にOPで著明であった。以上よりOPには肝細胞に対する直接保護作用のみならずKupffer細胞の活性化抑制とTxA2産生抑制作用を介する間接的な保護作用があることが示され、また、OKYにはKupffers細胞のTxA2産生抑制を介する間接的な肝細胞保護作用があることが示された。 最近、種々の肝障害の発生において肝非実質細胞や脾臓マクロファージ、門脈内皮細胞などの関与が注目されており、現在、分離細胞の立場よりこれらの細胞と広範肝切除後の肝障害との関係につき検討を進めている。
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