1995 Fiscal Year Annual Research Report
培養肝細胞を用いた広範肝切除後の残存肝細胞障害の研究
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05671060
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
川原田 嘉文 三重大学, 医学部, 教授 (40024814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横井 一 三重大学, 医学部, 講師 (60174843)
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Keywords | 広範肝切除 / 培養肝細胞 / Kupffer細胞 / TxA_2合成阻害剤 / 脾マクロファージ / PGI_2アナログ |
Research Abstract |
教室では、in vivoの実験にて肝広範切除後には末梢血及び門脈血中のTxB_2、6‐KF濃度が上昇し、肝不全発生例ではさらに上昇して高値を示すことを報告してきた。さらに肝広範切除後の残存肝より分離したKupffer細胞、肝実質細胞及びこれらの細胞のco‐cultureを用いた実験にて、TxA_2アナログの肝細胞細胞障害作用、PGI_2アナログの直接及び間接の肝実質細胞保護作用、並びにTxA_2合成阻害剤のKupffer細胞よりのTxA_2産制の抑制を介した間接的肝実質細胞保護作用を報告してきた。本年度の実験は、肝広範切除後の門脈血中のTxB_2濃度の上昇に着目し、肝広範切除後の肝細胞障害発生における脾臓、特に脾マクロファージの関与について検討した。【方法】(実験I)70%及び80%肝切除を行い、これに脾摘を併施した実験群を作成し、門脈血中、脾静脈中及び腸間膜静脈中のTxB_2及び6‐KF濃度を測定。肝切除後24時間後に肝実質細胞を分離し、viability、bleb形成率を測定(実験II)肝切除後24時間目に脾摘(‐)の各実験群より脾臓を摘出し、脾マクロファージを分離培養し、培養液中TxB_2及び6‐KF濃度を測定。【結果】(実験I)80%肝切除では70%肝切除に比し、門脈血中TxB_2及び6‐KF濃度が有意に上昇し、特に脾静脈血中の濃度上昇が著明であった。脾摘を併施した群ではTxB_2濃度の上昇が有意に抑制された。80%肝切除では肝実質細胞のviabilityの低下やbleb形成率の上昇が著明であったが、脾摘群ではこの変化が有意に抑制された。(実験II)80%肝切除後の脾マクロファージのTxA_2産生は有意に亢進しており、これに対してTxA_2合成阻害剤やPGI_2アナログの添加はTxA_2産生を有意に抑制した。以上の結果より、肝広範切除後にはKupffer細胞のみならず、脾マクロファージのTxA_2産生も亢進しており、肝実質細胞障害の発生に脾臓が関与していることが示唆され、また、TxA_2阻害剤やPGI_2は脾マクロファージに対してもTxA_2産生を抑制作用のあることが認められた。現在、同様の方法を用いて肝広範切除後の残存肝障害の発生に於ける腸管の関与や、閉塞性黄疸下の肝細胞障害につきて研究を進めている。
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