1993 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞癌におけるエネルギー代謝(グルタミン・プリン代謝より)の特性における実験的研究
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05671090
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
久保 宏隆 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70119791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田部井 功 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手
田畑 泰博 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (20256415)
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Keywords | 肝細胞癌 / グルタミン代謝 / グルタミン酸 / グルタミン合成酵素 / グルタミン分解酵素 / ミトコンドリア酸化的リン酸化 / DAB肝癌 |
Research Abstract |
癌細胞の特性の一つとして、高い増殖能と旺盛な核酸合成能があげられる。最近、各種腫瘍細胞のエネルギー産生と増殖に、グルタミンが重要な役割を持つことが明らかとなってきた。グルタミンは核酸のプリン、ピリミジン酸基をはじめ、細胞膜成分のグルコサミン、さらに、NAD,アスパラギンなどの合成に関与するなど、アミド基供給源として、生体の窒素代謝系に主要な位置を占めている。各種腫瘍細胞におけるグルタミン代謝の偏りを指摘する報告は多いが、化学発癌薬により誘発した肝細胞癌での知見はまだ得られていない。そこで筆者はラットを用い、3′‐methyl‐4‐dimethylaminoazobenzene(DAB)の投与により肝細胞癌を作製し、病理組織学的観察を行った。また、組織内グルタミン、グルタミン酸濃度を測定するとともに、グルタミン合成ならびにグルタミン分解酵素活性とAmidophospho ribosyltransferase活性を測定した。さらに、肝細胞癌組織内ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化可能を調べ、これを正常ラット肝と比較することにより、肝細胞癌組織内グルタミン代謝の特性について検討し,次の事実が判明した。1.肝細胞癌では正常肝と比べてグルタミン濃度が特異敵に低下していたが,逆にグルタミン酸濃度は上昇していた。2.肝細胞癌では,正常肝と比べグルタミナーゼ活性が亢進している反面,グルタミン合成酵素活性が低下していた。3.肝細胞癌では,プリン合成の律速酵素であるamidophosphoribosyltransferase活性が上昇していた。4.肝細胞癌ミトコンドリアは,グルタミン酸を呼吸基質として利用するだけでなく,正常肝細胞ミトコンドリアではあまり利用出来なかったグルタミンもエネルギー産生の気質として利用した。なお,これからの実験計画を考えると,平成6年度の実験を初めに行う法が,次の実験がスムースに行くと考え,平成5年度に行った。
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