1993 Fiscal Year Annual Research Report
攣縮脳動脈における平滑筋細胞のviabilityの検討-細胞死と攣縮の連関の可能性-
Project/Area Number |
05671149
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
根本 繁 東京大学, 医学部(病), 助手 (20228290)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野々村 禎昭 東京大学, 医学部(医), 教授 (80009993)
佐々木 富男 東京大学, 医学部(病), 講師 (10134561)
好本 裕平 東京大学, 医学部(病), 助手 (50242061)
金 彪 東京大学, 医学部(病), 助手 (90231290)
|
Keywords | 脳血管攣縮 / 平滑筋細胞 / 膜透過性 / 細胞内カルシウム |
Research Abstract |
平成5年度には、親水性核酸結合色素と疎水性核酸結合色素とを用いて、攣縮脳底動脈の平滑筋膜透過性を評価した。犬クモ膜下出血モデルの出血後7日目における攣縮の程度を血管撮影によって定量した後に、正常血管(血管撮影のみ施行)と攣縮血管を全く同一の条件において上記二種の蛍光色素による二重染色処理を行って観察した。正常血管においては平滑筋細胞の膜は親水性核酸結合色素の侵入を許さず、核が染色される細胞はごく少ない。疎水性核酸結合色素は正常細胞膜を通過するので、それによる核の染色-青い蛍光-が見られた。ところが攣縮血管においては親水性核酸結合色素の侵入を許して核が橙色の蛍光に染色される平滑筋細胞が多く見られた。 疎水性の色素によってのみ核が染色される正常細胞と親水性色素の浸透を許す病的細胞の頻度を定量的に観察したが、この変化は内膜直下の平滑筋層に多く見られ、外側の層には少数しか見られなかった。内膜直下における異常染色細胞の頻度は20-50%であった。以上の結果は攣縮脳底動脈における非特異的な平滑筋膜透過性の亢進を示唆するものであると考えられた。 一方、平成5年度に我々は同時にFura-2を用いて平滑筋の細胞内カルシウムイオン濃度測定の実験を進めたが、そちらにおいても攣縮脳底動脈の平滑筋において、カルシウムイオン膜透過性の著明な亢進を認めた。細胞外カルシウムイオン濃度を上昇させていったとき、細胞内カルシウムイオン濃度は上昇するが、この上昇が攣縮血管においては亢進していた。曲線のパターンは、正常動脈をカルシウムイオノフォアによって膜処理を行った後に見られるものと類似のものであった。これらの第一年度の成果より平滑筋の膜のカルシウム透過性亢進および非特異的膜透過性の変化が起こっていることが示された。
|